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Wednesday, May 30, 2018

大阪入管職員らの暴行で骨折、トルコ人被収容者が国賠訴訟


 5月29日(火)、大阪入国管理局に収容されている男性が、職員らによる不法な暴行を受けたなどとして、国を相手取って損害賠償を請求する訴訟を、大阪地方裁判所に提起しました。訴訟を提起したのは、34歳のトルコ人の男性(「Mさん」とします)です。2015年1月に日本に入国しようとしたものの認められず、いまなお大阪入国管理局に収容されており、その収容期間は3年4ヵ月をこえています。

 提訴のあった29日には、大阪地裁司法記者クラブにて、弁護団による記者会見がおこなわれました。この会見の内容と訴状などから、この事件についての事実関係と問題性を以下にまとめたいと思います。



1.事件の概要・経緯

 この裁判であらそわれることになる事件は、昨年の7月12日におきました。

 単独室に収容されていたMさんの服薬確認をおこなう職員が、侮辱的な態度をとったためにMさんは腹を立て、持っていた本を壁にむかって投げつけたといいます。服薬確認とは、被収容者が薬をほんとうに飲んだかどうかを確認する作業であって、処方された薬をためこんで自傷行為などに使用されるのを防止するためなどにおこなわれるものです。

 Mさんが本を投げつけたといっても、それは壁に向かってのことです。職員を危険にさらすような行為ではなかったはずです。ですから、入管側がこのMさんの行為を問題視するとすれば、その理由は、被収容者が職員に対し「反抗的な態度」をとったからということぐらいしか考えられません。もちろん、入管には被収容者の「反抗的な態度」に懲罰をくわえる権限はありません。

 ところが、このあと、7~8名の職員がやって来て、単独室からMさんを連れ出し、保護室へと連行しました。保護室とは、被収容者が自傷行為をおこなったさいなどに隔離をするための部屋です。職員たちはMさんをこの保護室に入室させたあと、訴状によると、つぎのような行為におよびます。

 原告を保護室に入室させた直後、本件入管の職員3名程が、足をかける、腕を掴む等して原告を転倒させた。転倒後、床にうつ伏せの状態になった原告に対し、本件入管の職員7人程が覆いかぶさるように制圧した。本件入管の職員のひとりが、このうつ伏せ状態にある原告の右手をつかみ、捻り上げた。捻り上げられた時、骨が折れるような大きな音が鳴り、原告は激しい痛みを感じた。
 それにもかかわらず、本件入管の職員らは、原告の両手を背中側に回し、後ろ手に手錠をかけて拘束した。原告は、本件入管の職員らに対し「痛い」「痛い」と訴えかけたが、5分~10分程度は手錠をかけられて拘束されたままであった。

 Mさんは、この職員らの暴行によって右上腕部を骨折し、外部の病院で入院して手術を受けました。ところが、術後のリハビリを十分にできず、現在でも可動域制限(右肩が重く、思うようにあがらない)などをうったえています。



2.4つの不法行為

 Mさんは、以下の4点について入管の不法行為があったとして、それぞれについて損害賠償を請求しています。

(1)保護室への隔離
(2)職員らによる暴行
(3)手錠をかけて放置したこと
(4)リハビリ等適切な措置を講じていないこと

 記者会見では、この4点について弁護団の弁護士たちからそれぞれ説明がありました。

 (1)(2)(3)については、隔離処分や制圧行為、戒具の使用にあたっての法令(被収容者処遇規則)にさだめられた要件をみたしていないという弁護団の指摘がありました。

 (4)については、外部病院での診療で医者からリハビリをするようにとの指示はあったものの、通訳人を介さない診療だったため具体的にどういうリハビリをしたらよいのかが本人に伝わっていないこと、また、理学療法士の関与がまったくなかったことが指摘され、現在にいたるまでMさんが十分なリハビリができていないという説明が弁護団からありました。なお、5月17日には、原告代理人から大阪入国管理局長に対し、専門職による継続的なリハビリ治療を、通訳を介して、可及的速やかに実施するよう申し入れたが、いまだ大阪入管はこれに回答すらしてきていないそうです。



3.監視カメラの映像

 記者会見では、2つの監視カメラの動画映像が公開されました。1つは、保護室の天井に設置された監視カメラの映像で、職員らにMさんが室内に連れ込まれ、一連の暴行を受けるようすが記録されているものです。もうひとつは、保護室の外の通路に設置されたカメラの映像で、Mさんが8人ほどの職員に連行され保護室に入室させられる様子がうつっていました。

 両方の動画から、Mさんが抵抗しようとしているそぶりはまったくみられませんでした。ひとつめの動画には、無抵抗のようすで保護室に入室させられたMさんに対し、職員たちが足をかけてうつぶせに倒し、腕をひねりあげるようすがうつっていました。その後、すでにぐったりして身動きしていないMさんに職員がなんの必要があってか後ろ手錠をかけるところも確認できました。

 動画にうつった一連の職員たちの行動は、なんのためにやっているのか、理解しがたいものでした。記者会見の質疑でひとりの記者も指摘していましたが、「制圧」ということであれば、Mさんを入室させたあとに職員が退室して保護室のとびらを閉めてしまえば、その目的は達せられるはずです。無抵抗のMさんを転倒させ、腕をひねりあげ、さらに後ろ手錠までする必要がどこにあったのでしょうか。弁護団によると、証拠保全で閲覧した大阪入管の内部文書(報告書)では、保護室内での職員たちの一連の行為を「制圧」行為としているそうです。「制圧」の必要な状況は、カメラの映像からはまったくみてとることができませんでした。

 おそらくMさんが右肩を骨折する原因となった行為だろうと思われる、職員が右腕をひねりあげる様子は、むごたらしいものでした。職員のひとりが、うつぶせのMさんの背中に自身の体重をあずけながら、つかんだMさんの右腕をひねりあげていたのです。Mさんの腕は、天井を向いてほぼ垂直になるぐらいまで曲げられていました。映像からは、柔道の関節技の腕挫腋固(うでひしぎわきがため)のようにもみえます。
すでに大人数の職員におさえつけられ、体を動かしようもないMさんに対して、大阪入管の職員らは柔道の技をもちいてまで、いったいなにを「制圧」する必要があったというのでしょうか。

 弁護団からは、Mさんを保護室に隔離したこと自体が、本来認められない懲罰目的での隔離であったことが推認されるとの指摘がありました。保護室入室後の一連の暴行については、なおさら懲罰目的としか思えないものです。以上のべてきたような映像から知ることのできる事実経過にてらして、大阪入管の職員たちの行為は、暴力によって威嚇して自分らの優位を示して相手を服従させる、いわば「シメる」とか「ヤキを入れる」とかの言葉で表現されるようなものだったと判断してよいと思います。



4.長期収容問題

 最初に述べたように、Mさんは3年4ヵ月もの超長期にわたって収容されています。記者会見において弁護団からも、長期収容のさなかにおこった暴行事件であるとのお話がありました。

 大阪入管に収容されているMさんとは、私たちも面会していますが、今後、仮放免許可をえて出所し、リハビリ治療を受けたいと希望しています。ところが、大阪入管は、Mさんを負傷させたあとも収容をつづけ、なおかつ、リハビリ治療を受けたいというMさんからの再三にわたる申し出も拒否しつづけています。ゆるされないことです。

 Mさんをはじめとする、長期間にわたり収容されている人の解放も、今後入管に求めていく必要があります。

 Mさんの裁判については、期日が決まりしだい、このブログで、あるいはTRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)などの支援団体から、お知らせと傍聴の呼びかけがあると思います。ご注目のほど、よろしくお願いいたします。


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今回の提訴についてのマスコミ報道



Friday, May 18, 2018

「東日本入国管理センターという場所は人の命を奪う場所」8Aブロック被収容者による要求書


 東日本入国管理センターで、インド国籍の被収容者Dさん死亡事件を契機にして、120人超の被収容者によるハンガーストライキがおこなわれていたことは、マスコミで広く報道され、このブログでも以下の記事で報告してきました。


 8Aブロックでは、30名超が参加していたハンストを4月20日(金)に解除し、この日の夕食より摂食を再開しました。この8Aブロックのハンスト参加者31名が、4月25日(水)、東日本センター所長あてで、連名で要求書を提出しました。要求書の直接のあて先は所長ですが、被収容者のおかれた苦境をひろく社会にむけてうったえた内容だといえます。入管施設で被収容者のおかれた状況にひきつづきの注視をお願いします。



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東センターの所長殿
 この要求書は、私達の要求を伝えたく書かせてもらいます。
 私達は、3月2日付けで所長殿宛てに嘆願書を出しました。その嘆願書に書かれた事がまぎれもない事実だということが証明されました。
 その証明のされ方は、自殺という形でひとりの命が奪われることになってしまったのです。その原因と責任は入管にあります。インド人の彼は2018年4月13日昼の12時ごろ、ここ東日本入国管理センターという場所に収容されていなかったらこの大切な命が亡くなってしまうことはなかったのです。
 彼は、この辛い生活、先の見えない長期収容に耐えられなくなり自殺をしました。シャワー室で首をつり…。
 入管は、私達の命で遊んでいるのでしょうか。私達の命は、そんな価値のないものなのでしょうか。どれだけ私達の人権がここで考えられているのか、このインド人が亡くなってしまったことでわかるはずです。
 大切な仲間の命が入管の収容が原因で亡くなってしまったことに対して私達は翌日の2018年4月14日からはじまり次々と他のブロックもハンガーストライキをはじめ、今では122人以上もの収容者が入管のご飯を食べず戦っています。
 これ以上、私達を長期収容しないで下さい。そしてこれ以上死者をだしたくないのです。
 こういった自殺を防ぐには、長期間の収容をすぐにやめるという方法しかありません。それ以外の方法では、何も変わらないのです。また死者を出すことになるのです。
 このように長期収容は、私達に対して精神的、肉体的に苦痛を入管から受けています。その結果が今回の自殺につながったのです。私達、外国人が苦しめられている証拠なのです。現在にも長期の収容のせいで精神的におかしくなり自殺をしようとしている人がたくさんいます。私達は、自殺をしようとしている人達を必死に止めています。「あきらめないで」「頑張って」「死なないで」等と声をかけたり、何度か実際に自殺をしようとした仲間を死んでしまう前に止めることができて未遂で終わった人もいます。こういうことが今、現在、東日本入国管理センターで起きているのです。
 私達は、また仲間の大切な命がなくなってしまうのではないか毎日脅えて生活しています。私達は死にたくありません。ここ、東日本入国管理センターという場所は人の命を奪う場所だということを私達は知って欲しいのです。
 私達を苦しめないで下さい。長期の収容をやめて下さい。私達を社会に戻して下さい。
収容者の皆より
平成30年4月19日

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 上に紹介した8Aブロックの要求書では、仲間の被収容者のなかに「現在にも長期の収容のせいで精神的におかしくなり自殺をしようとしている人がたくさんい」ることが報告されています。私たち支援者も、面会や電話を通じて被収容者から、自分自身も自殺を考えてしまうという訴え、あるいは仲間の被収容者が自殺をほのめかしているので心配だという声をたびたび聞きます。こういった訴えは、4月中旬の東日本センターでの死亡事件以後に、あきらかに急増しています。

 こうしたことから、東日本入管センターをふくむ入管収容施設で、自殺・自傷行為が連鎖的におこっていくことについて、私たちとしては非常に強い危機感をもっています。5月14日(月)には、不幸中のさいわいで一命をとりとめましたが、東日本センターで自殺未遂事件が起こりました。

 私たちは、16日(水)にこの方と面会したうえで、同センター総務課に口頭での申入れをおこないました。この自殺未遂事件は、収容の超長期化と言うべき状況の結果であること、また、われわれ支援者の感触としても、上記のような理由から、自殺や自傷行為が連鎖する危険性について強い懸念をもっているということを述べました。そのうえで、できるだけすみやかに、長期収容を回避する方向に運用をあらためるよう求めました。

Friday, May 4, 2018

【傍聴の呼びかけ】スリランカ人強制送還国賠「裁判受ける権利を侵害」(第1回口頭弁論)


 2014年12月18日、法務省はスリランカ人26人とベトナム人6人をチャーター機で強制送還しました。

 このときに送還されたスリランカ人2名が、この強制送還によって裁判を受ける権利をうばわれたなどとして、国を相手取って国家賠償請求訴訟を提起しました。

 この裁判の第1回口頭弁論が、つぎの日時と場所で開かれます。

日時:5月9日(水)10時15分から
場所:東京地方裁判所712号法廷

 原告2名は、難民認定申請をしていました。スリランカに帰国すると危険であるとして庇護を求めていたひとを、法務省が無理やりに送還したことは、言語道断の暴挙です。

 さらに、このふたりについては、難民申請の異議申し立ての棄却を告知された直後に無理やりに送還されました。難民として認定しないという処分は行政処分ですから、これを不服として裁判に訴えることができます。ところが、法務省は原告らの身体を拘束して無理やりに送還することで、憲法にも保障された裁判を受ける権利をうばいました。

 同様の手法での強制送還、裁判封じを入管当局はその後も現在にいたるまでくり返しています。こうした送還のやり方も問われる裁判であり、難民申請者等の今後の人権状況にも大きな影響をあたえる重要な裁判です。可能なかたは、ぜひ傍聴をおねがいします。






【関連記事】
1.今回の提訴についての報道

2.2014年12月のチャーター機送還について