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Monday, August 31, 2015

イスラム教徒の食事に豚肉が混入(東京入管横浜支局)


  いくつかマスコミ報道がなされていますが、東京入管横浜支局で8月12日、イスラム教徒であるCさん(パキスタン国籍)に、豚肉(ベーコン)の入った食事が出され、以降、Cさんは19日間にわたり入管の給食を拒否しています。

  この事件について、8月27日(木)に仮放免者の会として横浜支局にて申し入れをおこない、以下の申入書を提出しました(申入書原文では記載していた被収容者名を、「Cさん」として公開します)。


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申  入  書
2015.8.27.
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東京入国管理局横浜支局長  殿

関東仮放免者の会(PRAJ)神奈川
被収容者の抗議の拒食について
  8月26日現在、貴支局Bブロックに収容中のパキスタン国籍Cさんが、給食に豚肉が入っていたことをきっかけとして、2週間拒食を続けています。わたしたちが本人およびその家族、また同室の被収容者に聴き取りを行ったところでは、イスラム教徒であるCさんの給食は、豚肉抜きのものが別に提供されているはずでしたが、8月12日の夕食の際、Cさんは、豚肉を気が付かずに食べてしまいました[赤字部分につき、訂正あり。下に付けた文章を参照してください]。違和感を感じたため他の被収容者の食事を確認したところ、まったく同じものが入っていたので、Cさんが職員を呼んで確認してもらったところ、職員も豚肉が入っていることを認めました。Cさんはショックを受け、これまでも豚肉を知らないまま食べさせられてきたのではないか、という怒りもあり、抗議の意味をこめて、その後貴局から提供される給食を食べることを一切拒否しています。その結果、体重は、8月12日以前には67.1kgだったものが、8月21日には57kgと、10キロも減っています。わたしたちは、Cさんの健康状態の悪化を憂慮しています。
  ところが、Cさんのこの行動を知りながら、貴局が、ほとんど何もせずこれを放置し続けたことは、大きな問題であると私たちは考えます。私たちがCさんの拒食を知ったのは8月17日でしたが、8月19日に拒食開始後初めて面会した際、Cさんは、「一週間たつが、偉い人は一回も来ていない。すぐに偉い人に謝罪されていたら止めていた。もう一週間たつ。今から謝罪されてももう遅い」と言っていました。また、同じ時期、貴局の職員はCさんの妻に「本人が勝手に食べていないだけ」というようなことを言い、妻も大きなショックを受けています。必死の思いでの行動がほとんど無視されたことに対して、本人が強い憤りを持つことは、十分に理解できます。8月21日には、職員による何らかの謝罪があったということですが、これはあまりに遅すぎる対応であり、Cさんは、その後も抗議の拒食を続けています。
  こうした経緯を踏まえると、貴局が、今回起こった出来事の重大さを認識していないのではないかと思わざるを得ません。豚肉を食べる、というイスラム教徒にとって重要な宗教的な禁忌を犯させ、しかもそのことを軽視する、というのは、法務省令である「被収容者処遇規則」第二条(入国者収容所長及び地方入国管理局長(以下「所長等」という。)は、収容所等の保安上支障がない範囲内において、被収容者がその属する国の風俗習慣によつて行う生活様式を尊重しなければならない)の違反であるだけでなく、イスラム教徒であるCさんにとって大変な屈辱であり、重大な人権侵害です。2000年、インドネシアで、「味の素」の原料に豚肉が使用されている疑いがあるという噂が流れ、この問題はインドネシアで大きな社会問題となりました。こうした事例を上げるまでもなく、今回のことが重大な問題であるということは、容易にわかるはずです。Cさんによると、今回の給食に入っていた豚肉は、生まれて初めて食べてしまった豚肉です。そのショックの大きさは想像できるのではないでしょうか?
 また同時に、今回Cさんは、自分だけの尊厳がないがしろにされたことだけに怒っているのではありません。彼は他の被収容者の仲間のことを考え、収容所の劣悪な状況を改善するために行動してきました。Cさんもサインしている、8月5日に提出された(いまだに貴局からの返答すらない)要求書の中では、食事の劣悪さと、その改善が訴えられています。Cさんによると、彼が収容されてから、給食に髪の毛が入っていたことが5回もあったということです。そして、Cさんの夕食に豚肉が入っていた8月12日の昼食にも髪の毛が入っており、Cさんは昼食も食べていません。髪の毛が何度も混入するというようなありえない状況が放置され、何度訴えても改善されなかったこと、そうしたことも、Cさんの怒りの背景にはあります。
  Cさんは「いつもの入管職員の人たちは悪くない、謝ってくれたし私の体を心配してくれている」と普段接している担当職員たちをかばう発言も何度もしています。「他の収容者が、自分だけ食べるのが心苦しい、と言ってくれるので、この問題はイスラム教徒の自分だけの問題でみんなに迷惑を掛けたくないので、一人部屋に移してくれるように頼んだ」とも言っています。こうしたCさんの考え方の倫理性には心打たれます。私たちは、貴局に対し、以下を申し入れます。
(1) まずはCさんの健康に対して十分に留意し、そして、Cさんに対して改めて真摯に対応し、適切な対処を行うこと
(2) 食事の問題を含めて、8月12日付で私たちが申し入れた内容について速やかに対応すること。
(3) Cさんが、今回のこと、妻への入管のひどい対応のことなどを被収容者申出書に書いて提出しようとしたが、コピーをとらせないと言われ、出すのをやめて手元においている。Cさんに速やかにコピーをとらせること。
以上


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  上の申入書で「Cさんは、豚肉を気が付かずに食べてしまいました」と述べましたが、事実は、Cさんがベーコンを口に入れたものの味に疑問を感じたため吐き出し、職員を呼んで確認したところ、職員が豚肉の混入した食事を出してしまったことを認めた、とのことです。しかし、以前にも横浜支局で同種のサラダが出ていたため、Cさんはそのたびに自分が豚肉を食べてしまっていたと認識しており、このことに大きなショックを受けているということです。以上、訂正いたします。

  さて、イスラム教徒の食事に宗教的な禁忌である豚肉を混入させ、これに気づかなかったという過失も重大ですが、横浜支局の事後対応もきわめて問題のあるものです。

  Cさんに豚肉入りの食事が出されたのが、8月12日(水)。横浜支局からCさんにようやく謝罪があったのが、10日近くも経過した21日(金)。この間、Cさんが摂食を拒否して抗議をつづけていたにもかかわらずです。

  豚肉を食べることがイスラム教徒にとってきわめて重要な宗教的な禁忌であることは、一般的によく知られていることでもあります。日々入管業務にたずさわりそのための研修も受けてきたはずの者ならばなおのこと、この重要性を認識していないとは、およそ考えられません。申入書で述べたように、ことの重要さは「容易にわかるはず」のことがらなのです。したがって、今回の横浜支局の対応の遅さ・ずさんさの背景には、イスラム教徒の慣習・文化に対する無理解・認識不足というよりも、組織としての横浜支局の差別的体質があるのではないかと考えざるをえません。退去強制の対象となっている外国人が相手ならば、どんなあつかいをしてもかまわない、という差別的な人権軽視の発想が根深くあるものと考えないかぎり、このずさんな対応は理解しがたいものです。

  横浜支局の事後対応のありようからは、その組織的な隠蔽体質もかいまみえます。今回の問題が明るみにでたのは、Cさんが自身の被害事実を私たちをつうじて報道機関につたえたことによるものです。横浜支局は事件から15日も経過した8月27日、報道各社からの取材を受けてようやく事件を公表した、というのが事件の報道にいたる経緯です。

  宗教的禁忌にふれる食事を出していたという問題の重大性をかんがみるならば、Cさん本人にすみやかに謝罪と説明をおこなうことはもとより、入管みずから事実経過を一般に公表したうえで、再発防止への取り組みを約束すべきであったはずです。入管には、イスラム教をふくめ食にかんする禁忌のある宗教を信仰する多数のひとびとが収容されているのであって、今回の問題は横浜支局にとどまらず、全国の入管の収容施設全体についてその給食の信頼性をゆるがす事件だからです。

  横浜支局は、原因究明をふまえた再発防止策をすみやかにCさんにつたえるとともに、その内容を公的にもあきらかにすべきです。Cさんの食事への豚肉の混入が、今回の件にかぎったことなのか、さかのぼって可能なかぎり調査し、その結果をCさん本人に誠意をもって説明することも必要です。

  Cさんは、8月30日現在も、入管の食事を拒否しています。25日か26日ごろに横浜支局はCさんを外部の病院に連れていき、以来、Cさんは医師の指示で出された栄養剤を飲んでいるものの、拒食をはじめた12日から20日になろうとしており、その健康状態が心配されます。横浜支局は、Cさんが摂食を再開できるよう、本人とご家族に誠意をもった説明をおこないすみやかに信用回復につとめるべきです。

  横浜支局については、申入書でもふれているとおり、被収容者が食事もふくめて処遇改善をもとめた要求書を連名で出しており、また、職員が被収容者の私物を勝手に破損するという事件も起きています。




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