PRAJ (Provisional Release Association in Japan): Who We Are
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関東仮放免者の会「宣言」/賛助会員募集とカンパのおねがい

http://praj-praj.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html


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Thursday, June 27, 2013

【転載】同意なきチャーター便強制送還への非協力を求める要望書

  現在、法務省は、チャーター機による一斉送還を計画しております。


  これについて、政府の一斉送還執行に協力しないよう、日本航空株式会社(JAL)、全日本空輸株式会社(ANA)、成田国際空港株式会社(NAA)の3社に「要望書」を6月はじめに郵送しました。

  航空会社のうち、JALが、被送還者の空輸を請け負う可能性がきわめて高いと私たちは分析しており、JALに対しては、会談での申し入れに応じるよう、くりかえし申し込みました。しかし、JAL広報部は、日本の法律を犯した「不法滞在者」については「日本の法律を犯した」という1点のみで、「犯罪者」であるから航空会社の人道的、道義的責任と言われてもそれは航空会社が擁護できる範囲ではない、根本的には、国・法務省の問題だとの理由で、私たちとの会談には応じませんでした。

  国家による人権侵害は、多くの場合、「不法」や「犯罪」を口実に、またこれも多くの場合、形式上は「法にもとづいて」おこなわれるものです。そして、そこでの「不法」や「犯罪」という国家による規定が正当なものなのか、ということは問うべき問題としてあります。たとえば、歴史上も現在も、特定の思想や性的指向などが国家により「不法」化ないし「犯罪」化され、そうして「犯罪者」化された人々への人権侵害が、形式的・一面的にみれば「合法的」におこなわれるといった事例は多々あります。

  このように、「法」は、民間企業が国家の犯罪的あるいは非人道的な行為に加担・協力することを正当化する免罪符にはなりません。しかも、「要望書」にもあるように、一斉送還によって、国際法などに反する行為が日本政府によっておこなわれる可能性も高いのです。

  JAL広報部への意見提起・抗議は、以下までお願いします。


  なお、今回の申し入れ賛同団体は、以下の通りです。
  • BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
  • START
  • TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
  • WITH(西日本入管センターを考える会)
  • 牛久入管収容所問題を考える会(牛久の会)
  • 外国人を支援する神奈川の会
  • 家族会
  • 仮放免者の会
  • 難民支援コーディネーターズ・関西
  • 難民支援団体ピースバード


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同意なきチャーター便強制送還への非協力を求める要望書

  2012年12月19日の新聞報道によれば 法務省入国管理局は、「退去強制令書」が発付されたにもかかわらず帰国に同意しない「送還拒否者」をまとめてチャーター機に乗せ、強制送還する方針を固め予算要求するという。送還対象でありながら収容を解かれているいわゆる仮放免者は2500名存在し、こうしたケースを一気に減らすコスト面、安全面でも一石二鳥、三鳥の妙案だと入管は胸を張る。

  毎日新聞や読売新聞のように「不法滞在者」と罵声を浴びせ掛ける前に仮放免者はなぜ送還を拒否するのか考えてほしい。仮放免者は就労を認められていない。デフレに喘ぐ日本、その中で就労を認められない彼らは極めて厳しい生活を強いられている。自国の家族や日本にいる友人、配偶者からの援助に頼る生活、たまさか提供される不安定なアルバイトで日銭を稼ぐ、など、多くの仮放免者は、入管に出頭する電車賃にも困る困窮生活を送っている。
  それでも彼らが帰国できないのは、日本に妻や夫、子どもがいる、自国政府や警察よりも大きな力を持つ宗教的過激派や犯罪者グループなどからの迫害のおそれがあるなど、切実な理由があるからである。

  「婚姻関係の保護」、「子どもの最善の利益」、「重大な人権侵害が予想される地への非送還」といった諸原則は、国際的に確立された原則である。しかし、日本の入管の実務はこうした国際的規範から大きく逸脱している。

  例えば、難民申請者が自分の難民である事情を詳しく書いた陳述書を提出しようとしても訳文がないからと受け付けないなどその好例であろう。入管は「予算がないから翻訳はしない」、「翻訳に間違いがあると文句を言われるからやらない」などと主張する。母語しか書けず、翻訳者を見つけられないため途方にくれる難民をわれわれは何人見てきたことか。

  家族を理由に日本での在留を望む外国人も同様である。例えば、日本人の妻が年老いた親の面倒をみるため日本を離れることができないため日本で暮らすしかない外国人夫にも在留資格が認められないケースなど、なぜこんな真摯な愛情によって結ばれた家族関係を保護しないのか首をかしげたくなる事例が数多く存在する。

  2010年3月22日、成田空港で日本人の妻がいるにもかかわらず無理やり入管職員が飛行機に乗せようとして一人のガーナ人が入管職員の腕の中で息を引き取った。彼に在留資格を与えていれば、妻は生涯の伴侶を得、二人は平穏でつつましい生活を営んでいたであろうと思うと、彼もまた入管の貧困な移民政策の犠牲者だったとの思いがつのる。

  チャーター機の活用は欧米では一般的であるという。しかしその当の欧米では、チャーター便で送還された人が母国で投獄や拷問に直面したり、殺害されたケースがいくつも報告されている。英国からスリランカ、パキスタン、ジンバブエ、アフガニスタン、ナイジェリア、コンゴなどに送還された難民申請者がそれぞれの国で殺されたり、投獄されたりしている。また、送還中に死亡したケースも報告されている(英国で行われている強制送還の様子)。

  日本最大の入管の収容施設、東日本入国管理センターでは、人権侵害のむごさに若い職員が次々にやめていく現実をご存じだろうか。劣悪な収容状況を進んで支援者に打ち明ける職員もいる。飛行機という密室でどのような人権侵害が行われるかわれわれは深く憂慮している。
  以上の観点から我々は、航空会社および空港会社に対し、次のことを要望する

  1. 送還対象者の自由意思にもとづかない送還に協力しないこと。
  2. 強制送還が自由意思にもとづくものであることを、入管職員が立ち会わない場所で個別に確認しないかぎり、送還に協力しないこと
  3. 入国管理局に対し、チャーター便に医師の同乗を求めること
  4. 独自に客室内をビデオ撮影し、職員、送還者の行動、健康状態などを後日検証可能にすること
  5. 自由意思にもとづく帰国者に対し、ビデオ撮影を行い、人物が特定できないように画像処理した上で、合意したNGOにビデオを提供することの同意を得ること








(英国NGO報告書より。外部のカメラが及ばない密室ではこのようなことが・・チャーター便はまさに、お払い箱にしたい奴隷たちを処分するために現代の奴隷船、航空会社は奴隷船の船主。この黒人男性を踏みつけにすることでこの白人たちは妻子を養う。なんと呪わしい。)





手錠だけでなく足枷も。これを毎日新聞は安全と呼ぶ。








子どもとの離別を強いられる父親




送還を拒む難民申請者を飛行機に運び込む英国国境庁の “トレーニング”ビデオ



Wednesday, June 26, 2013

「人権は関係ないから」東日本入管センター職員が暴言


  おつたえしているとおり、6月18日と19日東日本入管センターの被収容者が、入管側との話し合いをもとめて、集団で帰室拒否のストライキをおこないました。


  この集団帰室拒否に対する入管センターの対応について、仮放免者の会として抗議の申し入れを所長の川村修行さんあてでおこないました。

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申 入 書
 2013年6月25日

東日本入国管理センター所長  川村修行 殿

仮放免者の会



  6月18日、19日の両日、貴センター被収容者が、貴センター側との話し合いをもとめて帰室拒否のストライキをおこないました。18日には3つのブロックで約50名が、19日には1つのブロックで約20名が、ストライキをおこないました。
  両日のストライキに対する貴センターの対応に関して、私たちは以下の2点について、看過することができないと考えております。
  第1に、貴センターが大人数の入国警備官を動員して威嚇し制圧しにかかり、被収容者側の話し合いの要求を拒否したことについてです。
  第2に、制圧の過程で貴センターの入国警備官による、被収容者の人権を公然と否定する暴言があったことについでです。

1.対話の拒否と制圧について
  貴センターは、18日の7Bブロックのストライキ(参加者7名)に対して50~60名程度の入国警備官を投入しました。19日の9Bブロックのストライキ(参加者約20名)に対しても約50名の入国警備官を投入しています。後者においては、入国警備官がストライキ参加者の腕や足をつかんで、むりやり居室に押しこむといった実力行使をともなった制圧もおこなわれました。
  対話をもとめた被収容者の非暴力的な抗議行動に対し、貴センターがこのような大人数での威嚇と暴力の行使でのぞんだ点をまず非難します。
  被収容者たちは、これまでも連名での嘆願書・申出書の提出や、集団でのハンガーストライキ等をつうじて、処遇改善や仮放免申請の審査を透明化することなどを貴センターにもとめてきました。そうしたたびかさなる被収容者側の行動は、貴センターへの対話の呼びかけと言うべきものでもありました。貴センター側がこれらに対して十分に誠意をもって回答してこなかったと被収容者たちは受けとめており、このことがこのたびのストライキにいたった大きな要因であると私たちはとらえております。今回のストライキにしても、被収容者側は、貴センターへの意見や疑問をつたえ、これに対する回答をもとめるという、あくまでも貴センターとの対話を志向した行動をとっております。
  ところが、貴センターは、対話を拒否し、制圧でもってこたえるという、きわめて不誠実な対応をとりました。とくに、9Bブロックでは、18日に被収容者側はいくつかの意見と質問を貴センターにつたえており、これらに対する翌日の返答を期待してこの日は帰室に応じたのでした。ところが、被収容者側がもとめた返答期限の翌日に貴センターは、制圧をもってこれに答え、被収容者との対話を一方的に打ち切ったのです。

  さらに、19日に9Bブロックの全員が帰室に応じたあと、貴センターはストライキ参加者のうち1名を他のブロックへの移室処分にしておりますが、この過程でも入国警備官らの不適切な行動がありました。
  まず、移室処分に際して、処遇部門の伊藤統括はつぎのように発言しております。
「移室します。あなたにはなにを言う権利もない。言うことを聞かないと公務執行妨害とみなす」。
  こうして伊藤統括は、当該被収容者の弁明や意見をまったく聞かず、文字どおり有無を言わせずに、移室処分を執行したわけですが、この処分が具体的にどのような法的根拠にもとづくものなのか、当該被収容者への説明はいっさいありませんでした。職権を行使するならば、その職権の根拠について説明するのは、公務員として当然の義務です。
  また、法務省令の被収容者処遇規則第四十一条は、事後にであれ被収容者が不服の申出および異議の申出ができることを定めております。伊藤統括がこうした規定に言及せずに「あなたにはなにを言う権利もない」と発言したことは、被収容者の正当な不服および異議の申出の可能性をみずからの力の誇示によって封じようとする恫喝と評するほかないものであって、職権の執行の仕方としても不適切と言わざるをえません。
  上記移室処分執行の過程では、複数の入国警備官たちが、当該被収容者に対し「なに見てるんだよ?」などと攻撃的な発言をくり返したうえ、にらみつけるなど、あきらかに職権の範囲を逸脱した挑発行為をおこなっております。
  また、上記移室処分に際して、当該被収容者は連行する入国警備官に腕をつかまれたために右ひじを痛めてしまいました。

  以上について、以下の5点を申し入れます。

(1)18日、19日両日の被収容者のストライキにおいて、貴センターがストライキ参加者との対話に応じず、制圧をもってこれにのぞんだことを不適切と認め、被収容者との対話を再開すること。とくに、18日に9Bブロックのストライキ参加者が貴センター側につたえた意見と質問について、誠意ある回答をおこなうこと。
(2)19日における、9Bブロック被収容者に対する移室処分について、職権の法的根拠につき、当該被収容者に説明したうえで、執行時にその説明がなされなかった点について当該被収容者に謝罪すること。
(3)同移室処分執行時における伊藤統括の「あなたにはなにを言う権利もない」との発言が適切なものであったかどうか、検討し、これについて貴センターとしての見解を当該被収容者につたえること。また、検討の結果、不適切な点があったとみとめるならば、その点について当該被収容者に謝罪すること。
(4)同移室処分執行時に当該被収容者が負った負傷について、早急に外部の診療機関を受診させ、診断証明書の発行を診療機関に国費で請求したうえで、発行された診断証明書を当該被収容者に手渡すこと。
(5)同移室処分執行時の入国警備官たちの暴言と挑発行為について、当該被収容者への聞き取りもふくめて公正な調査をおこない、その調査結果を当該被収容者につたえること。


2.入国警備官HC131の暴言
  19日の9Bブロックの帰室拒否者を帰室させるに際して、入国警備官HC131が被収容者の人権を公然と否定する暴言をおこなったことを、複数の被収容者が証言しております。  居室に入ることを求めた入国警備官に被収容者が「ぼくたちは人権を尊重されたいんです」と述べたところ、HC131は「人権は関係ないから」と発言したとのことです。
  これは、人権の尊重をもとめて話し合いを呼びかけている被収容者側に対し、言うならば、“あなたたちの人権については話し合うに値しないし、われわれにとってあなたたちはその人権について考慮されるべきような存在などではなく、たんなる管理の対象にすぎないのだ”と述べているにひとしいものです。この発言について、あるストライキ参加者も、「自分たちは入管に動物と思われている。人間としてみてほしい」と語っています。
  この、HC131による、被収容者の人権を当の被収容者たちの目の前で公然と否定し、尊厳を侮辱する差別的な発言は、私たちとしても、とうてい容認できるものでありません。
  この被収容者の人権を否定する入国警備官の発言は、公務員の憲法尊重擁護義務を規定した日本国憲法第99条への違反が明確であります。また、「この規則は、出入国管理及び難民認定法により入国者収容所又は収容場に収容されている者の人権を尊重しつつ、適正な処遇を行うことを目的とする」と定めた被収容者処遇規則第一条からみても、HC131の発言は、入国警備官としての資質を疑わざるをえない重大な問題発言と考えます。

  入国警備官HC131による「人権は関係ないから」との発言について、以下のとおり4点申し入れます。

(6)入国警備官HC131の「人権は関係ないから」という発言について、適切なものであったと考えるのか、貴センターとしての見解を示すこと。
(7)貴センターとして入国警備官HC131に対し厳正な処分を科し、その処分内容を公表すること。
(8)入国警備官HC131に、19日の9Bブロックのストライキ参加者たちのもとに出向かせ、自身の発言について謝罪させること。
(9)HC131の発言は、貴センターの全被収容者の人権を否定したものと言うことができ、これ自体が深刻な人権侵害である。入国警備官による人権否定発言があったことについて経緯と事実を説明した文書を貴センターの被収容者全体にむけて掲示し、所長としての謝罪をおこなうこと。

 以  上

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  申入書では、入国警備官の暴言をふくめた人権軽視の言動を問題にしています。もちろん、ここにあげた言動について、かれら入国警備官の責任はきびしく追及されなければならないと考えます。

  ただ、現場の入国警備官だけを非難すればすむ問題ではないということも、たしかです。

  「リアルタイムな収容所!」というブログがあります。このブログは、東日本入管センターに現在収容中の私たちの仲間が執筆しております(収容所内は、パソコンや携帯電話の使用がいっさい禁止されているため、郵便や面会時の宅下げをとおして支援者が原稿をうけとり、更新作業をしています)。

  このブログの4月30日の日記で、執筆者のBig_Papaさんは、収容所内の騒動を制圧したあとに入国警備官が発した「しんどい」という言葉を書きとめています。


  今回のような入国警備官の暴言などを見すごすわけにはいかないのは、いうまでもありませんが、こうした過酷で「しんどい」職務を入国警備官たちに負担させているのはだれなのか、という点も同時に問わなければならない問題です。

  上記のBig_Papaさんのブログなどからうかがうに、入国警備官たちの職務が、場合によって入国警備官たち自身の精神を疲弊させ、すさませてしまう結果をもたらしうるものだということは、確信できます。

  2年ほどまえ、おなじ東日本入管センターの入国警備官が「外国人をイジメるのが楽しい」との暴言事件をおこしており、センター側は非をみとめ、暴言をはかれた被収容者に謝罪をおこなっています。こうした事件がありながら、入国警備官による暴言がまた今回くり返されたことについて、かれの責任をきびしく問うと同時に、その背景も考えなければならないところでしょう。

  東日本入管センターでは、若い入国警備官がその職務に嫌気がさして、つぎつぎと職場を去っていくとも聞きます。

  さらに、現在、法務省は100人ほどをチャーター機をつかって一度に送還することを計画しております。その送還対象者の大部分は東日本入国管理センターに集められていると私たちは分析しております。この一斉送還の方針に、私たちはなによりもまず被送還者の人権と人道上の観点から反対しておりますが、この一斉送還がおこなわれた場合に現場の入国警備官の心身にとりかえしのつかない傷をもたらすだろうという点も憂慮されるところです。

  職務を現場で執行している入国警備官にみずからは安全な場所から指示を出し、かれら・かのじょに「しんどい」職務を一方的に負担させているひきょう者はだれであり、どこにいるのでしょうか?

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  帰室拒否ストライキについて、『読売新聞』(茨城版)が報じております(2013年6月22日付)。以下、転載します。


入管で外国人 帰室拒否

  法務省「東日本入国管理センター」(牛久市久野町)で、収容されている非正規滞在外国人の一部が18、19日、自由時間の終了時刻を過ぎても広間から自室に戻ることを拒否していたことがわかった。
  外国人労働者や難民の支援団体「BOND」によると、18日に約50人、19日に約20人の入所者が、規定の時間を過ぎても約1時間半、広間に座り込むなどし帰室を拒否したという。仮放免申請の審査の早期化や医療処遇の改善などについて、同センター側との対話を求めたストライキだとしている。一方、同センターは「両日とも帰室するよう説明し、比較的短い時間に全員応じた。ストライキではない」と説明している。


Sunday, June 23, 2013

帰室拒否のストライキについて、続報(東日本入管センター)



  前回記事で報じた、東日本入国管理センター被収容者による帰室拒否ストライキについて続報です。



  被収容者の集団帰室拒否は、6月18日(火)、19日(水)とおこなわれました。

  18日は、3つのブロックであわせて約50人が参加。19日は、1ブロックで約20人が参加しました。

  前回の記事でも述べたように、被収容者の行動は、センター側との話し合いをもとめた、非暴力のものです。

  これに対して、入管センター側は、数十人の入国警備官を動員して、制圧しにかかりました。

  18日にひとつのブロックでは、フリータイム終了時刻の16:30から7人が帰室を拒否しました。入管側は、この7人に対し、なんと5,60人の入国警備官がフロアになだれこんで、威嚇をおこないました。

  翌19日のべつのブロックでのストライキに対しては、被収容者約20人に対し、センター側は、約50人の入国警備官を動員しました。入国警備官たちは、フロアのかどにまとまってすわっていた被収容者たちの手足をつかんで、居室に押しこみました。こうして、4,5人がむりやり押しこまれたところで、被収容者側は「自分たちで戻りますよ」と言って、18:30ごろには全員が自主的に居室に戻りました。

  全員が帰室に応じたあと、センター側は「他の被収容者をまきこんだ」として、Aさんを別のブロックの一人部屋に連行し、隔離しました。この連行の過程で、Aさんは、完治していない右腕の古傷を入国警備官につかまれ、痛めました。

◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

  まず、被収容者たちの完全に非暴力に徹した、しかも話し合いをもとめての行動に対して、大人数の警備官を動員して制圧しにかかったという異様な対応に、センター側の被収容者を管理対象としかみない人権軽視の体質がよくあらわれています。

  センター側は、いったいなにをおそれているのでしょうか? センター側が被収容者の人権を尊重しようとしているのであれば、被収容者側の主張に耳をかたむけ、かれら・かのじょらのおかれた状況を可能なかぎり改善できるよう、話し合えばよいことです。すわって対話をもとめている被収容者たちに対して、センター側が集団での暴力をもって圧倒しにかかるという対応しか今回できなかったのは、自分たちのふだんおこなっている職務に理もなければ正当性もないことをみずから認めているということではないでしょうか? 話し合いの要求に暴力で応じるのは、自身が相手に対してしていることにやましさがあるからではないのでしょうか?

  また、センターが、Aさんを「他の被収容者をまきこんだ」との口実で隔離したことについても、被収容者たちに対する入管の姿勢と考え方がよくあらわれています。

  被収容者たちは、これまでも連名での意見書・嘆願書の提出や、集団でのハンガーストライキなどをつうじて、収容所の人権状況の改善をもとめてきました。それらの行動にしても今回の帰室拒否にしても、まえもって被収容者間で話し合いの場がもたれ、それぞれが主体的な意思のもとで参加するというかたちで取り組まれてきました。

  そうした、各人ひとりひとりが自分の意思で参加した行動を、センター側は、まるで一部の者が他を「まきこん」でひきおこされたものであるかのように解釈しようとしているわけです。このように、参加者全員によって取り組まれたストライキを「一部の者による煽動」へと矮小化せずにはいられないのは、収容所の処遇について被収容者の多数が不当性をうったえている事実から目をそらしたいというセンター側の願望のあらわれにほかなりません。ここにも、入管側のやましさの意識、つまり自分たちが人権侵害をおこなっているという事実をなかば自覚していながら、そうした認識を意識から抑圧しようとせずにはいられないという職員たちの様子がみてとれます。

  なお、この6月19日のセンター側の制圧行動において、入国警備官たちはAさんや他のストライキ参加者に対して、数々のゆるしがたい暴言をはいた事実が報告されています。その暴言のなかには、被収容者の人権を公然と否定し、尊厳を侮辱するもの、差別的なものもあり、私たちとしてもけっして見すごすことができません。次回の記事で、くわしく報告します。



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  19日のセンター側による制圧に先立って、被収容者側は18日に以下の意見や質問をセンター側に口頭でつたえて、翌日までの返答をもとめておりました。返答期限の19日にセンター側がとった行動が、以上に述べてきた、50人の警備官による制圧とAさんの別ブロックへの隔離だったわけです。

  • 仮放免申請の審査が2ヶ月もかかっている。その理由を説明してほしい。
  • 仮放免の担当者はなぜここに説明に来ないのか?
  • 仮放免不許可の場合、現状ではいっさい不許可理由の説明がなされない。不許可理由を説明してほしい。
  • 入管は家族のことを考えてくれない(面会でもなかなか会えない、電話もいつでもできるわけではない)。
  • 長く収容されている人を出してほしい。長期収容反対。仮放免制度を弾力的に運用してほしい。
  • 世界中に比べて日本は人権ない。日本の入管センターは環境が厳しい。
  • 医者の診療を1ヶ月も待たせないで。
  • 投薬の際、品川(東京入管)とちがって、薬の説明書(効能や副作用について記した紙)が出されない。
  • 仮放免の基本的な不許可理由、許可理由など、プラスマイナスを教えてほしい。
  • 奥さんがいること、訴訟を提起していることが仮放免申請においてプラスか教えてほしい。
  • ご飯に虫が混入していたことについて、ミスを認めているのか?
  • 収容期間が2,3年以上になる人もいる。収容期限(収容期間の上限)を決めてほしい。
  • 仮放免の申請理由が同じでも、1回目から3回目の申請は不許可になるいっぽうで、4回目が許可になることがある。なぜか? 収容期間の長さが許可・不許可と関係ある?
  • 刑務所から来た人はなぜ収容期間が長くなるのか? もう刑に服してきたのに、皆と比べて収容期間が倍になっている。
  • 刑務所で1年服してきた者が入管で2年になっている人がいる!
  • オーバーステイで23年いて何で今さら帰す? われわれはおもちゃなのか?
  • チャーター機での一斉送還はやるのか?
  • 裁判をやっている人をここに収容し続ける意味はないでしょ? 裁判中なのに、なんで収容するのか? 保証人、保証金もあって、勝訴したら在留資格を得られるのだから、逃亡する理由がないでしょ?

Wednesday, June 19, 2013

【速報】東日本入管センターでも被収容者のストライキ(注目と抗議をお願いします)

  昨日6月18日(火)より、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の被収容者が集団での帰室拒否ストライキを開始しました。

  東日本入管センターでは、フリータイムと呼ばれる開放処遇の時間帯(9:20~11:40、13:00~16:30)をのぞき、カギのかかった居室に閉じこめられます。今回おこなわれているストライキは、フリータイム終了時刻の16:30になっても帰室を拒否し、団体でのセンター側との交渉をもとめるものです。

  ストライキに参加している被収容者数など、現在のところ詳細は不明ですが、複数のブロックにまたがり、数十名規模での帰室拒否がおこなわれているもようです。

  あるブロックでは、およそ20名が18日夕方に帰室を拒否し、以下の要求をセンター側につたえたうえで、この日は18時前に全員が帰室したとのことです。なお、こうした夕方の抗議行動は、きょう(19日)以降も、被収容者たちは継続してくりかえしおこなう意向だといいます。

  1. 仮放免申請の審査に長期間かかっている(2ヶ月以上待たされている事例も多い)ので、その理由を説明すること。
  2. 長期収容をしないこと。
  3. 仮放免不許可の場合に不許可理由を説明すること(現在、センター側はいっさい理由を説明していない)。
  4. 医療処遇を改善すること。
  5. 人権を尊重すること。
  6. チャーター機での一斉送還の計画は本当なのか、説明すること。

  被収容者側は、これまでも連名での嘆願書提出などの手段によって、くりかえし処遇の改善等をうったえてきました。


  ところが、こうした要求に対し、入管センター側が真剣に検討し、回答してこなかったことに、被収容者たちの不満がたかまっております。

  今回の集団での帰室拒否ストライキは、以上のような経緯があっての行動であり、誠実に話し合いに応じることをセンター側にもとめた、非暴力による抗議行動です。センター側による暴力的な弾圧をゆるさないため、みなさまに、今後の推移を注目していただくとともに、電話やファクシミリ等によるセンターへの抗議をよびかけます。

  とりわけ、暴力的な制圧をおこなわないこと、被収容者との話し合いに応じ、誠意ある回答をすることを、センター側にもとめていただけるとさいわいです。


【抗議先】東日本入国管理センター  総務課
  • tel: 029-875-1291
  • fax: 029-830-9010
  • 〒300-1288 茨城県牛久市久野町1766-1



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【解説】
  このたびの被収容者による抗議行動の背景について、当ブログのこれまでの記事なども参照しながら、以下に整理しておきます。

  東日本入管センターには、現在およそ400名が収容されています。その大多数は、入管から退去強制令書を発付されたものの、それぞれ帰国できない事情をかかえ、国籍国への送還を拒否している人たちです。

  帰国できない事情は人によりさまざまですが、そのひとつは、帰国することで殺害や投獄の危険が予想される難民であるということです。周知のとおり、日本の難民認定審査は、申請者自身に難民性の立証責任をおわせるなど、申請者にとってきわめてきびしい運用がなされており、例年の認定者数も諸外国にくらべて異常に少ないという現状があります。こうしたなかで、退去強制令書を発付されながらも難民認定申請をおこない、仮放免許可での出所を待っている人が多数おります。

  また、日本に家族がいるために、帰国すると配偶者や子どもなどと離ればなれになってしまう人も多数収容されています。オーバーステイ状態にあっても、パートナーとの婚姻をととのえたうえで出頭すれば、入管は在留資格をみとめる場合が多いです。しかし、不運にも、婚姻の手続きを終えるまえに摘発されてしまった場合、摘発後に婚姻しても入管はなかなか在留資格を認めません。婚姻の手続きに時間や費用がかかるケースは多々あり、婚姻の準備をすすめているところで摘発されてしまうというケースも多くあります。また、法的な婚姻手続きが完了していても、「偽装結婚」の疑いありと入管側が判断すれば、在留資格が認められません。これは入管側の裁量ひとつで「偽装結婚」かどうかの判断を恣意的におこなえるということであって、これに対して外国人の側からは、訴訟等によって「真正な結婚」であるとの立証をみずからおこなっていくしかありません。

  帰国できない事情として、ほかに、日本への滞在が長期にわたるため、国籍国には生活基盤がもはやないという人も多数おります。そのなかには、10年以上あるいは20年以上ものあいだ、非正規滞在の労働者として職場等で不可欠な労働力として必要とされてきたものの、「不法滞在」「不法就労」を「厳格に」取り締まるという日本政府・法務省の方針転換後に、摘発され強制退去を命じられている人がいます。日本政府が、在留資格・就労資格をもたない外国人を「不法」化した状態で安価な労働力として利用する政策から、これをいわば「不要」とみなし集中的に摘発し追放する方針へと転換した過程については、以下の記事を参照してください。


  また、国籍国に帰国できないという人のなかには、かつて在留資格があったものの、刑罰法規違反により在留資格が取り消されたりその更新を認められず、退去強制令書を発付されたという人もいます。こうした人たちは、すでに懲役等の処分を受けたうえで入管に収容されているわけです。これにくわえて入管から国外追放を命じられるということは、ひとつの違法・違反行為に二重の制裁が科されるということです。日本国民であれば科されることのない、こうした二重の制裁が、外国人の場合は入管法を根拠に科されることがあるわけです。とくに、長期滞在により国籍国に生活基盤がない人、あるいは幼少期に来日しており国籍国での教育を受けていない人にとって、退去強制は、更生し社会復帰する機会を不当にうばうものにほかなりませんし、刑罰法規違反を理由にほとんど見知らぬ土地に放り出されるということを意味します。

  以上のように、帰るに帰れない事情を、東日本入管センターの被収容者のほとんどがかかえており、そうしたそれぞれの事情や国籍・宗教・民族等をこえた団結のもと、抗議行動がおこなわれています。

  しかも、昨年からとくに仮放免許可が出にくくなり、これにともない収容の長期化が生じています。収容期間が1年半や2年をこえる被収容者もおります。収容の長期化によって、病状が深刻化する被収容者がふえますし、センターの医療体制は約400人の収容人数にとうてい追いついていない状況があるため、以下のようなおどろくべき深刻な事態も現に生じています。


  このように、収容の長期化とこれにともなう医療処遇のさらなる悪化が、今回の被収容者のストライキの大きな背景としてあることはまちがいありません。

  なお、西日本入管センター(大阪府茨木市)でも、被収容者による抗議行動が6月14日からおこなわれています。長期収容と劣悪な医療処遇に対する抗議とのことで、被収容者数63人のうち、30人弱が参加してのハンガーストライキが継続中です。

Monday, June 10, 2013

仮放免者の話を聞く会(6.16)のお知らせ


仮放免者ってなに?
~共に生きることを考える~

仮放免者の会主催(関東) 第1回 仮放免者の話を聞く会
 (ミニ学習会)

  日本には現在、紛争や差別、迫害から逃れ日本にやってきた難民であったり日本人と結婚していたり、子供がいたり、20年以上日本で真面目に働いていたりして、日本での生活に完全に溶け込んでしまった、などどうしても帰国できない理由のある非正規滞在外国人の方々がいます。彼らは「日本に住んじゃいけない!!」といわれて入国管理局に収容されたことがあります。
  本会合では、イラン、スリランカ、パキスタン、ナイジェリア、ネパールなど世界各国出身の非正規滞在外国人、仮放免者の方々の生の声を聞くことができます。彼らの話を通して、彼らの実情を知り、彼ら、彼女らと日本で共に生きることを考えてみませんか?


                       
日時: 2013年 6月 16日(日) 14時から
集合場所: 高田馬場早稲田口出口 (13時45分)に集合後、当会事務所まで移動します。集合はPRAJの立て札が目印です。

主催: 仮放免者の会(PRAJ)
協力: BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
申し込み: 参加をご希望の方は、所属と名前を明記の上、下記までご連絡ください。
問い合わせ e-mail: otakeke123daa◎ezweb.ne.jp (◎をアットマークにかえてください)
もしくは090-3549-5890   大町 剛
*参加無料

仮放免者の会ブログ→ http://praj-praj.blogspot.jp/
学生、社会人の方、どなたでも参加できます!

Monday, June 3, 2013

同意なく一度に6本の抜歯/骨折を70日以上も放置(東日本入管センター)


  5月28日、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の医療処遇をめぐって、申し入れをおこないました。

  東日本入国管理センターの医療体制は「破綻している」と言っても言いすぎではない状況にあります。申入書では、本人の同意なく一度に6本の歯を歯科医に抜かれてしまった事例、また足の骨にひびが入った人が70日ものあいだ事実上放置されたという事例をつうじて、センターの医療体制が現在の収容人数にみあったものになっているのか、問うております。

  申入書ではセンター側に回答をもとめていますが、センターから「回答はしない」との連絡が5月31日にありました。

  なお、センターの処遇については、4月22日、被収容者たちから、医療面もふくめて改善要求が出されており、センター側の回答を待っているところです。こちらについても、あわせてご注目ください。


  以下、今回提出した申入書です(被収容者のお名前と国籍はふせて公開します)。

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申  入  書


2013年5月28日

東日本入国管理センター所長 川村修行殿

仮放免者の会(関東)



  貴センターの医療に関する処遇の劣悪さについては、被収容者はもとより、弁護士会や、私どもをふくむNGOなどからの、たびかさなる批判と改善要求が出されてきたことは、貴職もご存じのこととおもいます。ところが、いまだ、被収容者たちのあいだからは、重病・重傷にもかかわらず、まともな診療を受けられずに放置されているという訴えがあとをたちません。
  貴センターなりに医療処遇改善の努力を続けているだろうことは否定しません。しかし、予算・人員・設備の面で、400名近い被収容者数にみあうだけの医療体制が貴センターにはそなわっていないのが現状のように見受けられます。以下にあげる2件の事例は、貴センターが医療処遇の面で、もはや破綻しているといっても言いすぎではない実態を浮き彫りにしています。


事例1
  A国籍のGさんは、1月30日、貴センター内での歯科治療において、一度に6本の歯を抜かれ、現在も痛みのために満足に食事をできない状態にあります。
  この歯科医の処置およびその前後の貴センターの対応として、まず問題なのは、一度の治療で6本もの歯を抜くという歯科医による処置が、Gさんの同意なくおこなわれた点です。たしかに、彼女は、抜歯手術がおこなわれる3週間前の診療において、歯科医から抜歯をおこなうとの方針を説明され、これには同意していたと言います。ところが、彼女は事前には「1本か2本抜く」ものとしか認識しておらず、一度に6本もの歯を抜かれて「びっくりした」と証言しております。
  1回の手術で6本の抜歯をおこなうことについては、歯科医から事前に説明があった可能性もありますが、患者につたわっておらず、結果的に、インフォームド・コンセントはなかったと言えます。当日の診療時には、職員がGさんに対する医師の説明をさえぎって、診療を待っている患者がほかにもいるので手術に早くとりかかるよう医師にうながしたとの証言もあります。
  抜歯は、敗血症ショックによって死にいたる危険性もある外科手術です。とくに、免疫力の低下した状態では敗血症のリスクが高まるため、風邪気味、睡眠不足、過労気味、発熱時の場合、手術を避けるべきだとされています。Gさんは手術時において、収容期間が1年3ヶ月の長期におよんでおり、体調が万全とは言えない状態でした。Gさん自身、手術前からよく眠れない状態が続いていたといいます。
  ところが、歯科医からは、手術にともなうリスクの内容と大きさ、また、そのリスクに対しどのような対処をとりうるのか、といった説明はなく、それどころか、どの歯を何本抜くのかという手術内容の最低限の説明すらなされないまま、抜歯という外科手術がおこなわれたわけです。これは、医療というよりも、傷害と言うべき行為です。
  さらに、手術後の貴センターの対応も、非常に問題です。Gさんは、1度に6本もの歯を抜かれてしまったため、食べ物を満足にかめず、食事に支障をきたしている現状です。ところが、貴センター職員は、入れ歯の代金に80,000円かかる、それも自費で負担するようにと彼女に言ったとのことです。
  Gさんからすると、1回の診療での抜歯は1本か2本だけと認識していましたから、一度に6本の歯をうしなうというのは想定していなかった事態です。また、事前には歯科医から、入れ歯の代金は分割で支払うことも可能だと説明されていたにもかかわらず、一括で支払うよう要求され、話がちがうと困惑しています。80,000円という金額は、彼女がすぐに用意できる金額ではなく、入れ歯がないために現在も苦痛と不便を強いられています。


事例2
  B国籍のSさんは、2月14日に運動時間に足をケガしました。同日、貴センター内での診療を受けましたが、医者の診察は文字どおり「みただけ」で、骨の状態なども調べず、鎮痛剤を出すのみの処置だったといいます。
  その後、Sさんは職員に痛みを訴えましたが、「ちょっと待って」と言われるばかりで、いっこうに診療を受けられないため、3月15日に診療申出書を提出しました。ところが、Sさんがようやく診療を受けられたのは、4月3日のことです。このとき、レントゲン撮影をおこない、右足の親指の先にヒビがはいっていることがわかりました。ところが、この日の診療でも、応急処置がおこなわれたのみで、その後も4月26日の診療までなんの処置もなく放置され、しかたがないので自分で包帯を巻いていたといいます。
  このように、Sさんは、痛みを訴えていたにもかかわらず骨折が発覚するまで50日ちかくを要し、さらに次の診療まで20日間以上も放置されたことになります。
  このSさんのケースからあきらかなのは、貴センターの外科医療の体制が破綻しているという事態にほかなりません。あとでふたたび触れるように、貴センターの複数の被収容者からは、外科医の診療のある日は月に1日しかないとの証言を得ています。現在約400人を収容している貴センターにあって、これはいちじるしく不足しているものと言わざるをえません。
  収容所内での診療が不足しているならば、早急に外部の診療機関で診療できるようにする必要がありますが、Sさんに対してはそれすらなされていません。


  以上、貴センターが医療処遇の面で、現在の収容人数を維持するのに必要な体制にはほど遠いことを示す事例をあげてきました。しかも、GさんとSさんのケースは、氷山の一角であり、また、医療処遇の劣悪さについての訴えは、歯科と外科にとどまりません。
  以下は、複数の被収容者らからの聞き取りによって私たちが把握している、貴センターの医療体制の現状です。

(1)歯科医の診療は、週に1日(午後のみ)。1日の診療数は15名程度で、1人の患者にかける時間は、抜歯以外の処置では5~10分程度。また、それぞれの患者は治療の間隔が、3週間から4週間あいてしまう。
(2)外科医の診療は月に1日。
(3)皮膚科医の診療も月に1日。痔を診る医者(肛門科?)の診療も月に1日。
(4)内科医の診療は週に2日。
(5)精神科医の診療日は月に2回。これと別にカウンセラーが週に1回来ている。
(6)収容のストレスのため生理不順等の被収容者が多数いるが、婦人科医の診療日はなし。

  (1)について、これでは歯科の治療を継続的におこなうことは事実上不可能と言えるでしょう。一度に6本の抜歯をおこなうといった、通常では考えられないような性急な処置がとられたのも、患者数に対して診療体制がまったく追いついていないという状況のためではないでしょうか。
  (2)の外科医の診療についても、先にみたような、骨折した患者が70日間以上も事実上放置されるといった事態が生じるのも必然的と言えるでしょう。もっとも、たとえ収容所内での外科診療が現状の状態であっても、外科医不在時にけが人を迅速に外部の診療機関に連れていく体制が十分にととのっているならば、大きな問題は生じないかもしれません。しかし、先の事例2のような事態が実際に生じているのは、必要な外部診療を実施するための人員がまったく足りていないことを示しています。
  外部診療のための体制の不備は、外科にかぎらず、所内の診療では対応できないあらゆる病人・けが人の生命と健康を危険にさらすことになっています。最近でも、重病者の外部診療を要求しての被収容者による集団での申出書提出や帰室拒否等による抗議が頻発していることは、貴職らもご存じのとおりです。
  また、事例1のように、患者本人への十分な説明がおこなわれないまま、同意のない医療行為がおこなわれていることも、きわめて深刻な問題です。患者の身体にとりかえしのつかない影響をおよぼすこともありうる手術や投薬においては、リスクもふくめて治療方針をきちんと説明したうえで、患者本人の選択と同意にもとづいて治療をおこなうべきことは、言うまでもありません。貴センターには、日本語での意思疎通が得意ではない被収容者も多数いるわけですから、医師の説明を患者につたえられる能力をもつ通訳を同席させるなど、インフォームド・コンセントが十分におこなわれるための条件を整備することも、欠かせないはずです。


  以上、述べてきましたように、貴センターの医療処遇は、つぎの3点において、現在の被収容者数にみあった体制にないと考えざるをえません。

(a)所内での診療を担当する医師が不足していること。
(b)予算・人員いずれかの深刻な不足により、外部診療が十分になされていないこと。
(c)時間的また通訳等の人的な不足から、最低限のインフォームド・コンセントすらなされないまま、患者を危険にさらす医療行為がおこなわれていること。

  以上3点につき、まず、貴職が現状をどのように認識・評価しているのか、ご回答ください。また、貴職が問題があると認識・評価している点につき、具体的にどのように改善していくのか、その方法と計画をご回答ください。


以  上

 
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Sunday, June 2, 2013

5・31「第1回仮放免者一斉再審申立」の報告


  5月31日に、前回記事で告知していた「第1回仮放免者一斉再審申立」を、「仮放免者に在留資格を!」弁護団と共同でおこないましたので、報告します。

◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

  東京入管への一斉申立にさきだって、10:00から弁護士会館で記者会見をおこないました。弁護団の弁護士、仮放免者の会の支援者とともに、今回の申立に参加した仮放免者当事者のうち4名もこの記者会見にのぞみました。

  このうち、ミャンマー出身で無国籍の男性は、自分は帰るべき「国自体がない」ので在留特別許可を得て日本に住みたいとうったえました。

  フィリピン国籍の女性は、1歳6ヶ月のやはり仮放免状態にある子どもを抱いて会見に出席しました。彼女は、帰国した場合、夫(永住者の男性)と離ればなれになってしまうため、「ファミリーで離れたくない」と述べ、また、子どもが健康保険に入れないことの苦境をうったえました。

  難民申請者であり、仮放免者の会のリーダーのひとりでもあるバングラデシュ国籍の男性は、「命があぶないから帰られない」といった自身の事情とともに、仮放免者には帰りたくても帰れない事情がそれぞれにある(難民であること、日本で結婚していること、滞在が長期間におよぶこと、重い病気にかかっていることなど)と語りました。

  日本滞在歴が23年におよぶイラン国籍の男性は、建築現場での落下事故の影響で外傷性てんかんになり、転倒の危険があるために杖を手放せませない状態ですが、9年ちかくものあいだ仮放免の状態にあります。かれは、仮放免者である自分たちは「この社会で、存在している? 存在していないの? どっちなんですか?」と問い、「われわれは存在していない感じですよ、いま。いるんだけど存在していない」と述べました。

◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

  記者会見のあと、13:00より東京入管に仮放免者20名の再審申立をおこないました。

  今回の仮放免者一斉再審申立は、4月13日に関東弁護士会連合会(関弁連)と仮放免者の会が共同で開催した「第1回被仮放免者臨時法律相談会」におとずれた仮放免者が対象になっています。相談会は相談者ひとりに担当の弁護士が2人ずつつくかたちでおこなわれ(参加した弁護士は計22名)、それぞれ担当した弁護士が再審申立の書面(難民申請者については意見書)を作成して、この日の一斉申立におよびました。

  東京入管では、申請者、弁護士、支援者のほか、今回の申請者ではない仮放免者たちも合流し、あわせておよそ70名が見まもるなか、申立書が提出されました。

  一斉申立については、TBS、共同通信などもこれを報じています。

◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

  一斉申立の後、仮放免者の会として、東京入管で以下の申し入れもおこないました。


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申  入  書
2013年5月31日
法務大臣  殿   
法務省入国管理局長  殿
東京入国管理局長  殿


  我々、仮放免者の会は、これまでにも幾度もどうしても帰国する事の出来ない仮放免者達に在留資格を付与するよう申し入れてきました。仮放免者達はある者は愛する家族との生活のため、自身の難民性のため、病気の治療のため、または自身が長年かけて築いてきた生活、人間関係、社会とのつながりを守るため等、それぞれの理由のために日本での生活を希望している者です。彼ら、彼女らにはどうしても帰国出来ない理由、断ち切りがたい絆が日本に存在します。今回、「仮放免者に在留資格を!」弁護団と我々仮放免者の会が申立を行なった仮放免者達は何れもこのような帰るに帰れない理由を抱えた者達ばかりです。彼ら、彼女らに対して最大限の人道上の配慮を持って在留資格を付与していくことを我々は申し入れます。

  2010年の西日本、東日本両入国管理センターでの大規模ハンガーストライキ、東日本入国管理センターでの被収容者の相次ぐ自殺、国費無理矢理送還中にガーナ人男性が死亡した事件、退令仮放免者による相次ぐデモ、ハンスト等は、入管がどうしても帰国出来ない外国人の問題に対し収容や再収容、送還といった暴力的方法に対処しようとすることの限界を明らかに示しています。退令仮放免者についても、彼ら、彼女らはどうしても帰国出来ない事情があるからこそ過酷な収容にも耐え、仮放免となり、仮放免中の人権上の著しい制約下においてもなお本邦での在留を求めて生活しているもので、これら仮放免者に対し入管が繰り返しの収容、送還に固執することは、結局は再度の長期収容と仮放免といったサイクルを繰り返すことになります。このような無用のサイクルを際限なく繰り返すことは、退令仮放免者及びその家族の心身を収容によって単に痛めつけるためのものにしか過ぎず、退令仮放免者の抵抗や自殺等の痛ましい犠牲者を再び生み出すことにつながるのみで問題の解決にはなりえません。これら仮放免者の問題の解決には彼ら、彼女らの本当に帰国出来ない理由を斟酌し、在留資格を付与していく以外の方法はないのです。

  難民申請者については、現在日本では、難民認定に際して、認定基準においても申請者自身に課せられる立証責任においても極めて厳しい運用がなされ、本来帰国すれば生命の危険があり保護が必要な者達に保護を与えることを拒否する結果となっています。これらの者達については少なくともUNHCR難民認定基準ハンドブックの定める「灰色の利益」に鑑み、難民認定していく事で救済していくべきと我々は考えます。また入管では「迫害主体を当該国家としない者についてはこれを難民として認めない」という運用がなされているようですが、そのような文言はいわゆる難民条約にはなく、解釈の問題に過ぎません。難民条約の定める理由により迫害を受ける者で、当該国籍国の十分な保護を受けられない者に関しては、難民として認定する、あるいは人道的な配慮から在留を特別に許可する事でこれを救済するよう申し入れます。

  日本では、バブル期には製造、建築等いわゆる3K職場と呼称される労働現場で当時の日本の若者がこれを忌避した事から人手不足が深刻でした。当時それを埋め、日本の発展を底辺で支えていたのは非正規滞在外国人でした。階層性を成す日本の労働市場においてそれを底辺で支えていたのは貴職もご存知の通り紛れもなく外国人労働者達でした。こうした現実、またこれらに依拠しなければ日本の中小企業、労働市場は立ち行かなかったという現実があるのだから、2003年10月の法務省入国管理局、東京入国管理局、東京都及び警視庁による「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」、2003年12月の犯罪対策閣僚会議による「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」等により国として非正規滞在外国人の労働力に依拠しないと明確に打ち出す以前に来日し、結果として定住するに至った者に在留資格を付与していく事は社会的公正という見地からも重要であると我々は考えます。またこうした者を長期間にわたり非正規滞在のままにして労働力として搾取し続け、不要となれば排除する事は著しく道理と公正を欠いており、日本がそのような国であるという評価が国際的に定まることもまた望ましくありません。我々仮放免者の会は、これら長期滞在者については、彼ら、彼女らが日本の発展、繁栄を支えてきた事、職場で、地域社会で築いてきた人間関係等の豊かな社会関係資本を最大限考慮し、在留資格を付与していくことを求めます。

  仮放免者達の中には、日本人の配偶者、在留資格所持者の配偶者、一家全員仮放免者(異なる国籍を持つ者同士の婚姻で子供の仮放免者含む等)がいます。市民的及び経済的権利に関する国際規約(B規約)の第23条の2による「婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。」とあり、同規約の第23条の1には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とあります。さらには「児童の権利に関する条約」の第3条には「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定されています。愛する家族と共に暮らす事、家族と引き離されたくないという気持は誰しもが持つ切なる想いです。日本に家族(配偶者、及び扶養する子供、及び扶養すべき者)がいる者については、上記国際条約の規定にのっとり、家族統合に十分に留意し、然るべく在留資格を付与していくことを申し入れます。

  また仮放免者は特に医療の面において著しい排除を受けており、仮放免期間の長期化に伴い、生命の危機のある疾病に罹患する者も増加します。これら重病者に対しても早期の在留資格付与を望みます。

  今回申立を行った仮放免者達は上述してきたようなどうしても帰国する事の出来ない事情を抱えています。特に重病者、子供の仮放免者、仮放免期間の長期化等深刻な事例は多くあります。仮放免者の問題に関しては早急な解決が必要です。我々仮放免者の会は、今回申立の仮放免者及び帰国出来ない退令仮放免者について、人道的見地に立ち本邦への在留を認めることで救済し、早期にこれら仮放免者の問題を解決するよう申し入れます。



申し入れ団体    仮放免者の会

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