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Tuesday, October 29, 2013

医療放置は「日常的に行なわれている」――東京入管被収容者による「要望書」

  東京入国管理局の被収容者(Iブロック)が、局長あてに10月22日付けで医療処遇を改善する「要望書」を提出しました。「要望書」は、19名10国籍(スリランカ、ブラジル、フィリピン、ナイジェリア、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、タイ、ガーナ、ペルー)の連名で出されております。

  東京入管では、収容されていたロヒンギャ難民のアンワール・フセインさんが、医療放置されたのち、10月14日に死亡する事件がありました。
  このフセインさんの死は、上の申入書でも述べたとおり、他の被収容者やその家族、友人の間に「自分も(自分の家族、友人も)病気になり倒れたときには医師に診せてもらえず、救急車も呼ばれないまま命を落とすのではないか」といった激しい動揺と恐怖、入管に対する不信感をひきおこしています。

  「要望書」は、外部からの監視の目の届きにくい入管収容施設の医療体制についての、きわめて具体的な報告にもなっており、その点でも非常に貴重なものと言えます。



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東京都港区港南5-5-30
東京入国管理局内
東京入国管理局長殿

平成25年10月22日
東京都港区港南5-5-30
東京入国管理局内
Iブロック内長期収容者


要  望  書

私達は、難民、日本人配偶者、日系人、家族の生活などさまざまな事情によって特別在留許可の申請、難民申請や退去強制令書の取消訴訟等などの理由によって収容されている者です。Iブロック内においては長い者で8ヶ月以上の長期間にわたって収容されている者もいて、現在東京入国管理局内において医療関係に関して、かくブロックの医療に関する何の知識も何の資格も持っていない素人の職員による身勝手な判断や、東京入国管理局内での勤務している医者による不十分な診断、又は病状にあった適切な診査をせずに薬を出すことによって、私達の病状は相当悪化しており、事実最悪の事態になっております。具体的には、私達の体調不良や病気になった時にかくブロックにいる担当職員に申し出をし医務診察してもらうことになっていますが、かくブロックにいる、介護又は看護などといった医療関係に関する何の資格も持っていない素人の職員の判断でわけわからない薬を飲ませるだけでなく、たとえ心臓の痛みを訴えてもすぐに診察させずに一、二週間放置させられます。

私達は体調不良を訴えてから二週間以上の時間がたったあとに医務診療を受けることになっても、医務室に連行される前に入管の職員に言われる症状以外の症状を医者に話さないようにと注意された上で医務室に連行され、医務室内においても医者が体にふれて診断したり、詳しい症状を聞いた上で診断したりすることはほとんどありません。又は病状にあった適切な診査を行なった上で薬を投与するのではなく医者と入管の話し合いで病状は何であろうと皆に同じ痛み止めを与えるだけで適切な治療してもらえないのは現在の状況です。

又は、緊急事態になっても医者でもない素人の職員の身勝手な判断によりいつ死んでもおかしくない状況になるまで何時間も放置させられているのは、現在東京入国管理局内において日常的に行なわれているとのことです。

東京入国管理局に収容させられている以上は、私達の健康状態や病気に関して適切な治療をさせる義務や責任が法的に東京入国管理局にあることは言うまでもないことなのですが、現時点で東京入国管理局側はその義務をはたしていません。

人間が疾病を治癒させるために適切な治療を受けることが出来る権利は、人間の尊厳から発する最も根本的な権利であり、憲法25条の生存権の自由権的側面として保障される権利であることは明白である。こういった憲法で保障されている根本的な人権を東京入国管理局によって侵害されていることは一切許しません。

(1)かくブロックにいる介護、看護などと言った医療関係に関する資格を持っていない素人の職員による判断で薬を飲ませるのは止めさせ、申し出た者を直(ただち)に医務診療をさせること。

(2)医務診察を希望する者については少なくても一週間に一度、医務診察を行うこと。

(3)医務診察の際に医者が必ず患者から症状を聞き、患者の体にふれてきちんとした診察し、又は病状にあった適切な診査(レントゲンやM.R.Iなど)を行なった上で病状にあった薬を与え治療させること。

(4)東京入国管理局内で治療することが不可能な場合に、痛み止めなど投与し様子を見るなどと言って長びかせるのではなく、直(ただち)に外部の病院で治療させること。

(5)緊急事態になった場合、又は医者の不在の場合に救急車を呼ばずに医者でもない素人の職員の身勝手な判断により長時間放置されている行為を止めさせ、直に救急車を呼び病院に搬送させ治療させること。

私達は入所した時の健康な身体で出所することを強く望んでいる。
以上のところ改善させ、現在東京入国管理局内にある医療問題を直に改善せよ。

[以下、氏名・国籍等の欄――省略]

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【補足】
  以上、紹介したIブロックの被収容者の「要望書」からは、東京入管の医療処遇のきわめてずさんな実態がうかびあがってきます。
  • 診療が必要か不必要かという判断を、職員(入国警備官)がおこなっていること
  • 入国警備官の判断で、あるいは医師の十分な診察がおこなわれないままで、薬が出されていること(医師法が禁ずる無診療投薬*1の疑いあり)
  • 被収容者が問診で医師に話してよい内容について、入国警備官が制約をくわえていること
  東京入管の収容場をふくむ入管収容施設では、重病者が必要な診療を受けられずに何週間も放置されるという事例にこと欠きません*2。上記のような実態からみてとれるのは、各入管収容施設が質量両面で十分な医療体制をそなえておらず、それゆえ診療件数を抑制することが入国警備官の「任務」になっているという現状です。つまり、診療日(東京入管では医務診療は月・水・金のみ)や、外部診療のための連行の態勢といった医療体制の限界をこえて被収容者を受診させないようにすることが、現状において入国警備官の「仕事」になっているということです。亡くなったフセインさんが、意識不明の状態で約50分ものあいだ放置されたことの背景には、こうした入管収容施設の医療処遇の問題があったと考えざるをえません。

  「要望書」が述べるとおり、「人間が疾病を治癒させるために適切な治療を受けることが出来る権利は、人間の尊厳から発する最も根本的な権利」にほかなりません。被収容者は入管によって身柄を拘束され、自由に病院まで行くこともできなければ、他の被収容者が病気やケガに苦しんでいても病院に連れていくこともできません。したがって、被収容者のうったえがあれば、すみやかに診療を受けさせることは、収容主体である入管の義務であって、それができないならば、収容をやめるべきです。

[注]
*1  医師法第20条「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」

*2  同意なく一度に6本の抜歯/骨折を70日以上も放置(東日本入管センター)参照。




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