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関東仮放免者の会「宣言」/賛助会員募集とカンパのおねがい

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Friday, December 27, 2013

東京入管執行部門職員の暴言・暴力行為等についての申入書

  12月26日に、被収容者に対する東京入国管理局の執行部門職員の暴言・暴力行為等について、申し入れをおこないました。

  執行部門とは、退去強制令書の「執行」、すなわち強制送還をおこなう部署です。「強制送還」と言うと、身体を拘束してむりやり航空機にのせるという方法での送還(「国費無理やり送還」とも呼ばれます)がイメージされるかもしれません。しかし、このような形での送還は件数としてはごく少数で、強制送還の大多数は「自費出国」というかたちで執行されています。「自費出国」においては、退去強制令書を発付された被送還者が出国に同意し、旅費をみずから負担するかたちで、送還されます。

  執行部門の「チケット担当」と呼ばれる職員は、退去強制令書を発付された人と「執行面接」をおこない、送還を忌避する人への帰国勧告もふくめた「自費出国」のための準備・相談の職務をになっているものです。

  ところが、この「執行面接」において、チケット担当による暴言や暴力行為があり、そのなかで難民申請の取り下げや行政訴訟の断念を強要するような行為があったこともあきらかになったことから、これに抗議し申し入れをおこないました。

  もちろん、申入書に例をあげたような個々のチケット担当の暴力そのものと言うべき行為はきびしく追及されなければならないし、東京入管執行部門のあり方が問われなければならないことも言うまでもありません。しかし、執行部門とその職員による、ひかえめに言っても「行き過ぎ」と言えるような暴力的な手法が、なにに起因するのかという点も同時に問わなければなりません。

  日本の社会・経済がさまざまな面で依存してきた非正規滞在者を文字どおり一掃しようという、2003年ごろに始まる政策がすでに破綻したことはあきらかだということ、また、その破綻した政策に無理に固執しようとしてきたことの帰結のひとつが、こんにちの「仮放免者問題」であるということは、これまでも私たちが主張してきたところです(参照:仮放免者問題と強制送還について――この10年の入管行政をふりかえって)。

  このたび申し入れた執行部門職員の暴言・暴力、そして、個別の国費無理やり送還と比較してもその強引さが覆うべきもなかったチャーター機による先日の一斉送還(参照:チャーター機によるタイ人一斉送還に抗議する申入書)は、政策のゆがみの反映でもあり、同時にこれを支えている経済界、日本社会の住民のあり方もまた問われなければならないところです。以前に転載した『日経新聞』の記事が論じるとおり、問われているのは「不法就労者と知りつつ利用しようとしてきた日本社会が負うべきつけの精算」でもあるのです。

  以下、今回の申入書の全文です。


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申  入  書


2013年12月26日

法務省入国管理局長  殿
東京入国管理局長  殿
東京入国管理局執行部門首席入国警備官  殿

関東仮放免者の会(PRAJ)


  東京入国管理局執行部門のいわゆる「チケット担当」による、被収容者にたいする暴言・恫喝・差別発言の事例があいついでいる。法務省入国管理局および東京入国管理局にたいし、以下にあげる事例について調査した上で、執行部門職員のフジワラ、タニダ2名を厳正に処分するとともに、暴言・恫喝・差別発言を受けた被収容者に局としての謝罪をおこなうことなどをもとめる。


事例1
  10月21日午後、チケット担当のフジワラ(B030)は、Iブロック(当時)の被収容者Aさんに対し、「難民をやめて欲しい。出来ないのだから、すぐにやめて下さい」などと述べ、難民申請を取り下げるよう罵声をはりあげて恫喝をくわえた。フジワラの怒鳴り声は、調べ室の外にも聞こえるほどのもので、ドアのまえを通りがかった他の被収容者が驚くほどのものであったという。さらに、フジワラは、自身のぼうしを机にたたきつけ、そのぼうしをAさんの顔にむかって投げつけるという物理的な暴力行為にもおよんでいる。また、フジワラはAさんに対して、「[調べ室に]毎日呼ぶから」と述べ、上記のような暴力的な聴取を今後ともくり返すことを予告して、精神的な圧迫をくわえている。
  Aさんは、これらの件に関し、不服申し出をおこない、11月7日付けで東京入国管理局長名での「理由あり」の判定書を受け取っている。ところが、Aさんは入管側から「[フジワラを]しかっておきましたから」と口頭での説明をうけたのみで、いまだフジワラおよび東京入国管理局からの謝罪はなされていない。さらに、フジワラに対する処分の有無および内容もあきらかにされておらず、フジワラはあいかわらずIブロックに出入りして職務をつづけているという。


事例2
  11月20日に、前述のフジワラは、Iブロック(当時)の被収容者Bさんに対しても、きわめて不適切な言動におよんでいる。Bさんが、自身の受けた退去強制令書発付処分について代理人をたてて行政訴訟をおこなう意向であることを述べると、フジワラは通訳を介して「あなたはお金があるのか? どこからそのお金を用意するつもりなのか? あなたは脳みそがないのか?」などと暴言をはいた。また、フジワラは、Bさんを「うそつき」よばわりしたうえで、「入管相手にあなたなんか勝てるわけがない」と述べて、訴訟を断念させようと恫喝をくわえた。さらにフジワラは、Bさんの婚約者が同国人の友人たちから経済的支援を受けていることについて「こじきと同じようなものだ」と侮辱する発言をおこなった。


事例3
  12月3日、チケット担当タニダ(ID番号不明)は、Cブロックの被収容者Cさんの家族が生活保護を受給していることについて、「サギである」などと決めつけ、「区役所が訴えれば、おまえの奥さんのビザも取り消しになる」「東京の警察は入管の言うことを聞く。警察におまえの奥さんをつかまえさせることもできる」などと述べて、Cさんを威嚇した。なお、Cさんの妻は、Cさんがオーバーステイであることを区役所の担当者に申告したうえで生活保護を受給しており、タニダによる「サギ」うんぬんは中傷以外のなにものでもない。また、いち行政機関にすぎない入国管理局の職員が、警察や区役所の権限事項をあたかもみずからが左右できるかのように語り、被収容者を密室で脅迫するのは、ひかえめに言っても職務の範囲と権限を逸脱した行為と言うべきものであって、許されない。
  タニダについては、11月にもべつのCブロックの被収容者Dさんに対しても、調べ室に呼んで威圧的な面接をおこない、面接終了時にドアをけっとばしてDさんに退室を命じるといった暴力行為におよんだことが、報告されている。また、タニダは着用を義務づけられた職員のIDをしるしたプレートをかくして職務をおこなっているという。


  以上にあげた事例から、フジワラ、タニダの2名が基礎的な人権意識を欠き、日本国憲法の遵守義務を課せられた公務員としての適性をいちじるしく欠いていることは明白である。
  ただし、かれら2名だけを処分して済むような問題とも考えられない。というのも、チケット担当の一部の者が、被収容者を「おまえ」呼ばわりし(上記タニダ以外にも「おまえ」という呼称をもちいるチケット担当がいるという証言が複数の被収容者からなされている)、差別的・侮蔑的な発言をくりかえし、ぼうしを投げつけたりドアをけりとばしたりといった行為におよぶのは、かれらがこれら行為を、「職務として許容される範囲内のもの」ないし、「組織において分担された役割として自身に期待された職務」と理解していたと考えられるからである。つまり、東京入国管理局ひいては入管組織全体において、外国人、とりわけ退去強制手続きの過程にある外国人に対しては、通常では人権侵害とみとめられるような言動があっても、それが人権侵害と認識されないという、外国人に対する根深い差別体質があると考えざるをえない。


  以上をふまえ、以下、申し入れる。

(1)  被収容者に対する暴力行為・暴言・差別発言・恫喝行為のあったフジワラ、タニダの2名、ならびにこれらの者を監督する責任のあった上司を厳正に処分すること。
(2)  東京入国管理局長ならびに東京入国管理局執行部門首席入国警備官は、被害を受けた4人に公式に謝罪すること。
(3)  東京入国管理局長ならびに東京入国管理局執行部門首席入国警備官は、東京入国管理局全被収容者に対し、文書の掲示等によって、フジワラ、タニダ2名の不適切な言動の内容と処分内容を具体的に報告するとともに、今後このような人権侵害を引き起こさないための改善方針と計画を提示すること。なお、同様の報告および方針・計画の提示は、すでに東日本入国管理センターに移収されたAさん、強制送還されたBさんに対しても、おこなうこと。
(4)  チケット担当による「執行面接」について、人権侵害を防止するための職務規定・規則がすでにあるならば、これを公表すること。ないならば、早急にこれをさだめ、公表すること。
(5)  一般論として、執行部門等に所属する入国警備官が、退去強制令書の発付を受けた者に対し、「難民申請してもムダ」「裁判をやってもあなたに勝ち目はない」等の発言により、難民認定申請、また退去強制令書発付処分に関する行政訴訟を断念させるように働きかける行為は、適法また適切な職務の遂行の範囲たりうると考えているのか。東京入国管理局としての見解を示されたい。
(6)  入国管理局職員、とくに退去強制手続きに関与する職員にたいする人権研修の現状を検証し、適切な人権研修をあらためておこなうこと。

以  上

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  申入書の事例1のAさんは、「チケット担当」から受けた暴力行為等について、東京入管局長に対し、不服の申し出をおこないました。これにたいし、東京入管側は「理由あり」としてAさんの申し出を認めました。

  ところが、Aさんにたいする謝罪が現時点でもなされていないばかりか、東京入管側は、不服の申し立てについて「放棄書」を書くようにAさんにすすめるなど、問題をもみ消そうとするかのような、きわめて不誠実な対応すらとっています。

  以下に、Aさんの不服申出書、および「理由あり」の判定後の入管の対応についてAさんが記した文書を、Aさん、文書を日本語訳したAさんの友人であるEさんおふたかたの了解を得て、公開します。


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【Aさんの不服申出書】



  私は、Iブロック○室の○○○○[国籍]のAと申します。昨日のチケットの担当とのやりとりの中におかしい点があったため、ここに書きます。
  昨日(10/21)の午後2:00~4:00の2時間の間に、チケット担当のB030の方に呼ばれ、取り調べ室へ行きました。そこで言われたのは、「難民をやめて欲しい。出来ないのだから、すぐにやめて下さい。」と言われました。何度も同じ事を言われ、最初は普通でしたが、だんだんと強い口調になりました。私は、最初からおかしいと思いました。難民の結果もまだ出ておらず、それどころかインタビューすら1回も受けていないのに、しかも「難民」担当ではなく、「チケット」担当だったため、おかしいと思いました。私はことわっていたため、しまいにはどなりつけたり、一番精神的に苦痛だったのは、その担当はぼうしをとり、そのぼうしで机をたたき、そして私の方へ投げつけてきました。私には当たらなかったのですが、左ほほをかすめました。この時に、「毎日呼ぶから。」とも言われました。難民担当でもない人、しかもどなりつけたり、物を投げつけたりするのは、法にふれる事だと思い、私は納得いきません。それに、私には家族の事など、事情があり、在留資格を得るための訴えは、私には自由に出来るはずです。ですから、人として、話すなら普通に話し、物など投げつけたり、精神的苦痛、精神的暴力はけっして許しません。そして、チケット担当の人はとにかく関係ないと思います。これは人権侵害です。ただちに調査を行い、厳正な処分を強く求めます。
  そして、この日本語訳を書いている私、○○○○[国籍]のEも、この時間に面会に呼ばれ、取り調べ室の前を通りましたが、どこのヤクザがどなっているのかと思ったくらいの罵声でした。すぐに、Aさんが呼ばれた事を思い出しました。あり得ない事だと思いました(同じ部屋で、事情を聞いていたため。)。
○○○○[国籍]のA


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【「理由あり」の判定後の対応について】

  私は、○○○○[国籍]のAと申します。私はチケット担当のB030のフジワラという担当にに呼ばれ、取り調べを受けました。内容は、「難民申請をやめて、国へ帰って下さい。」との事でしたが、最初は普通だったのがだんだん口調が荒くなり、取り調べ室の前を通る人(面会に行く人など)が気づくほどでした。そして、しまいには帽子で机をたたき、そのぼうしを私の方へ投げ、当たらなかったが、左ほほにかすめました。それから「これからは、あなたが難民申請をやめるまで、毎日呼ぶから。」と言われました。私はこの事で精神的暴力、精神的苦痛を受けたとともに、そもそもチケット担当の職員が、難民についてこれだけの口出しをする事は、疑問に思い、法に反する事ではないかと思ったので、不服申し立てをしました。そして、それから私は、この日から担当の顔を見たり、前に呼ばれたりするだけで、恐怖感を覚えました。
  そして、11/7(木)に判定書をいただき、結果は「理由あり」って事で、その担当の方(三浦さん)からは「B030にはしかっておきました。」とのみ言われました。私は、実際に何もあやまられてもいなければ、B030は今も毎日のように見かけます。私は先ほども言った通り、B030も、他の担当も、顔を見るだけで苦しくなります。毎日、恐怖と屈辱な思いで過ごしています。気が休まることは一時もありません。私はとにかくこの入管のシステムに問題があると思い、たとえ「理由あり」という結果でも、何の動きもなく、本当に、どのような対応をとってくれたのかも確認出来ていません。ですので、私はもう一度異議申し立てをし、B030に対しての処分の証明書をいただきたいと思いまして、異議申立書を出すために書きました。そして、翌日の11/8(金)にもう一度、この異議申立書を出すのに呼ばれました。そこで私はまた三浦さん(今度は通訳つき)に担当していただきましたが、異議申立書を受け取ってくれませんでした。というのは、「理由あり」(判定書)に対して「不服」がある時に異議申立書を書くという説明を受けました。これに関してはよくわかりましたが、その後に「書くなら『放棄書』を書くように。」とまで言われました。私は、この入管のやり方をぜひ変えていただきたく、このようにまた私みたく他の同じ目にあう人が出ないようにして欲しかったため、放棄書を書くのは違うと思いました。そして、私はこの時に実際に受けた扱いや、された事を入管が調査し、事実確認された内容を証明していただきたくお願いしましたが、判定書のみしか得られないと言われ、うまく言いくるめられました。
  私には難民申請をする権利があるのなら、何の関係もないチケット職員に呼ばれ、「申請をやめろ。」って言われ、暴言や精神的暴力を受けて、どうしても許せません。なぜ、このようなやり方、扱いを当たり前のようになされているのかが納得できません。私の他にも、似たような扱いを受けて苦しんでいる人が何人もいます。こういう現状を知りながら、紙一枚(判定書)ですませている入管の管理のあり方が不適切としか思えません。苦情の申し出をしても、責任者である方から言いくるめられ、もうこの職員とも接する事や、見るだけで怖くて仕方ないです。毎日が本当に屈辱で恐怖感を覚える日々です。私の人権を侵害され、人としての人格を大きくゆがめられたと感じています。
  誰を頼ればいいのか、わからなく、このようなかたちをとらせていただきました。どうかお力をいただきたく、お願い申し上げます。


○○○○[国籍]のA

Thursday, December 26, 2013

「医療を改善してほしい」「シャワーの湯が出るようにしてほしい」(東日本入管センター被収容者による要求書)

  東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の被収容者による連名の要求書を公開します(人名はイニシャル表記にあらためました)。

  要求書は5Aブロック(30名が署名)、8Bブロック(20名が署名)からそれぞれ出されています。



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【5Aブロック】

平成25年11月12日  東日本入国管理センター所長どの


  私は、5Aブロックで1番日本語がうまいという理由で、5Aのだいひょううとして、この手紙を書かせていただきます。私は5Aの○○○号室のA(ブラジル人)です。

  5Aブロックでは、困っている人が数多くいます。

  勿論一人一人問題をかかえてるんですが、1番困っている人達は、病気をかかえている人達です。今回はとりあえず、5AのB(中国人)、C(ブラジル人)、D(タイ人)の3人の状態を書かせていただきます。

  まず一人目のB(中国人)は、何という病気かわかりませんが、この病気は、4ヶ月前ぐらいから出て来て、身体中に14リットルぐらい水たまってて、入管内の病院に行きましたが、医者から薬をもらって飲みましたけど、全く病気が直らないです。足や頭、みぞおちが痛くて辛いです。そして、だんだん病気が悪化しています。

  次にCのことを話します。Cの場合は、刑務所から始まった病気です。病気はひふ病と言われているらしいです。この病気は、頭や身体全体に出てて、身体中全てかゆいです。にもかかわらず、外の病院に連れて行ってもらえず、ここの病院から、薬ばっかりです。でも、薬ぬっても正直全然変わらないです。

  それと、こしも悪いです。外の病院で2回ほど見てもらったけど、1回目は、こしの ところに ちゅうしゃをうたれて、痛み止めをもらった。 痛み止めを使用しても全く解決しません。痛みは、おさまらず、2回目行った時には、こしもんをもらって、現在は使用してます。そして、それでも痛みがおさまらなければ、もう1回 ちゅうしゃをうつって言われましたがちゅうしゃをうつと すごく ぐあいが悪くなって、頭もすごく痛みます。

  最後にD(タイ人)について書きます。Dの病気は、品川入管から痛くて、品川入管の病気には、1回行きましたけど、どんな病気かって聞いたら、わからないと言われて、そして、痛み止めをもらっただけです。品川入管では、何度も痛いと言いましたが、大丈夫ですか、どこが痛いとか聞かれたけど、心配しているようにみせていただけとしか言いようがないです。そして、結局 茨城入管に来て、こっちの方でも、見てもらったけど、同じく痛み止めをもらいました。そして、まだ痛いから、相変わらずだったので、もう1回ここの病院に行きました。そしたら、トミロンという薬をもらって、飲んでますけど、全く変わりません。しかし、どんな病気か、教えてくれません。普通は、どんな病気かとか、何で痛いかとか、教えるべきなのに、何も教えてくれません。こっちで何回も何回も外の病院に連れて行って下さいって頼んでも、まだ とか、あとで、としか答えてくれないです。この病気は毎日お腹の下らへんが痛みますし、しょんべんする時も痛いです。毎日我慢しています。でも、これ以上に病気が酷くなれば、こわいし、心配しています。

  3人の状態はこれで以上です。


  他のブロックは、わかりませんが、5Aブロックは、皆一人一人 色んな病気を背負っています。寝れないとか、ストレスで出来る病気も少なくありません。ここの病院に行っても、痛み止めばっかりです。

  病気とあわない薬とか、薬飲んでも全く変わらないのも少なくないです。時間がたつにつれ、病気は、どんどん悪化しています。病気をかかええてる人達は皆 同じことを言っています。病院に連れて行ってって言っても、結局2、3後にしか連れて[行って]くれない。これは本当に困ります。病気は止まらないし、待ってくれないです。すぐ何かしないといけないのが普通です。2、3ヶ月後に病院に行っても、直る病気が直りにくくなるのも十分ありえます。

  ここでは一人一人の病気を解決出来ないのであれば、なんらかの方法を考えて下さい。無理であれば、仮放免で出して、自分達で病院に行ける状態にするべきです。ここに居て、一人一人の病気はどんどん悪化しています。


  この手紙について、2週間以内に返答を願います。


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【8Bブロック】

申出書

  これから寒くなる季節に入りますので  入管に対し  カゼ薬(入管職員が保管し投与するもの)の不足と午前中のシャワーの湯が出ない事について見直してもらいたいので よろしくお願いします。

  まずはカゼ引いて、職員に薬を頼んでも ないと言われるので 薬の支給、出来れば「バファリン」や「パブロン」をお願いします。

  その次  午前中のシャワーの水を湯にしてもらいたいのです。午前中 運動後や面会前に体をキレイにしたくても  シャワーが冷たいので  運動したくても しない人や  面会で嫌な思いをしてしまうのが全体の意見です。
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  5Aブロックが問題にしていた医療処遇については、センター側から改善するとの回答があり、その後5Aの被収容者からも一定の改善がみられたとの評価の声も聞かれました。

  8Bブロックが要求していた、午前中にシャワーのお湯を出してほしいという件についても、お湯が出るようになったとのことです。

  ただし、シャワーの件にかんしては、そもそもなぜこのような基本的で当然な要求がこれまで放置されてきたのかという点は不可解です。午前中にシャワーのお湯が出るようにしてほしいという要求は、以前からあったものです。

  午前中にボイラーをとめてシャワーは冷水しか出ない状態にするというのは、2011年の東日本大震災後に東日本入国管理センターによってとられた措置ですが、なぜこのような状態を1年半にもわたって継続させてきたのか、その意図と理由をはかりかねます。

  また、医療にかんしても、以前から指摘しているとおり(同意なく一度に6本の抜歯/骨折を70日以上も放置(東日本入管センター) 参照)、そもそも予算・人員・設備の面で、センターが収容能力をこえた被収容者数をかかえているという構造的な問題が解消されていないからこそ、5Aブロックの要求書が指摘した医療放置が生じるのだと言えるでしょう。

Wednesday, December 25, 2013

チャーター機によるタイ人一斉送還に抗議する申入書

  12月8日に、法務省はチャーター機をつかってタイ人46名を強制送還しました。これについて、関東仮放免者の会(PRAJ)としては、当ブログなどをとおして抗議の呼びかけをおこなっております。


  また、12月19日に東京入国管理局、同20日に東京入国管理局横浜支局、同24日に東日本入国管理センターに出向き、以下に掲載する申入書を提出し、このたびの送還につよく抗議しました。


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申  入  書


2013年12月19日

法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東日本入国管理センター所長  殿
東京入国管理局長  殿
東京入国管理局横浜支局長  殿

関東仮放免者の会(PRAJ)


  法務省は、12月8日、タイ人46名(4歳児1名をふくむ男性26名と小学生2名をふくむ女性20人)をチャーター便により強制送還した。この一斉送還の実施につよく抗議する。
  当会としては、同意なき送還そのものに反対するが、今回の一斉送還は以下のような重大な人権侵害をともなっていた点でも看過できないものである。


1.送還による家族分離
  法務省は12月9日の記者会見において、今回の送還にあたり「家族をばらばらにしていない」との発表をおこなったようである。ところが、家族が分離されたケースが多数あることが確認されている。
  当会の調査によると、日本人の配偶者(日本およびタイでの婚姻が成立している)、永住者の配偶者(日本での婚姻手続きは準備中であるもののタイでの婚姻が成立している)がそれぞれ複数、また定住者の配偶者(日本およびタイでの婚姻が成立している)が今回の被送還者にふくまれていることがあきらかになっている。さらに、法的な婚姻はととのっていないものの、事実婚にある夫婦の一方が送還されたケース、血縁関係がないものの同居していた子(配偶者の子)と送還により分離されたケースもあり、実質的に家族として生活していたことが明確であるにもかかわらず、今回の送還により分離された家族は多数存在している。
  このたびの一斉送還は、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する」(第二十三条第1項)とさだめた「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)に違反し、家族を分離するきわめて非人道的なものであった。


2.長期滞在者の送還
  今回の被送還者には、7月6日におこなわれたフィリピン人一斉送還時と同様、2004年よりまえに来日した長期滞在者が多数ふくまれている。なかには、滞在期間が20年以上におよんだ者も複数いる。
  バブル期に製造、建築等いわゆる3K職場と呼称される労働現場で当時の日本の若者がこれを忌避した事から人手不足が深刻であった。当時それを埋め、日本の発展を底辺で支えていたのは非正規滞在外国人であった。こうした現実、またこれらに依拠しなければ日本の中小企業、労働市場は立ち行かなかったという現実があるのだから、とくに2003年10月の法務省入国管理局、東京入国管理局、東京都及び警視庁による「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」、2003年12月の犯罪対策閣僚会議による「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」等により国として非正規滞在外国人の労働力に依拠しないと明確に打ち出す以前に来日し、結果として定住するにいたった者を送還することは、社会的公正という見地からも容認できない。


3.仮放免者を再収容しての送還
  今回の一斉送還においては、仮放免者を再収容して送還したケースが複数あった。そのなかには、前述の日本人の配偶者もふくまれている。
  当会がこれまでくりかえし申し入れてきたとおり、過酷な収容にたえぬき仮放免された者たちは、帰国すると危険が予想されるため難民申請をしている、帰国によって家族が分離される、長期間の滞在によりすでに国籍国に生活基盤がないなど、それぞれ帰るに帰れない事情をかかえた者たちである。
  2010年の西日本、東日本両入国管理センターでの大規模ハンガーストライキ、東日本入国管理センターでの被収容者の相次ぐ自殺、国費無理やり送還中にガーナ人男性が死亡した事件、退令仮放免者によるあいつぐデモ、被収容者によるあいつぐハンスト等は、入管がどうしても帰国出来ない外国人の問題に対し収容や再収容、送還といった暴力的方法に対処しようとすることの限界を示している。いまや3000人を超える仮放免者をこうした暴力的方法によって帰国させることは事実上不可能なのであって、また人道上の観点から言っても、こうした帰るに帰れない仮放免者に在留資格をみとめる以外に解決の道はありえない。


4.行政訴訟の機会を不当にうばうかたちでの送還
  送還されたなかには、12月6日(金曜)夕方に難民不認定に対する異議申し立て棄却が通知され、週明けを待たずに8日(日曜)に強制送還された者があった。これは、難民不認定処分取消訴訟の出訴期間内(処分内容を知ってから6ヶ月以内)での送還であり、また、難民認定の再申請をはばむために送還直前の金曜夕方に異議申し立て棄却を通知するという姑息なやり方による送還であった。
  また、今回の被送還者のなかには、退去強制令書発付処分取消訴訟の出訴期間内(処分内容を知ってから6ヶ月以内)であるにもかかわらず強制送還された者が多数おり、そのなかには、提訴にむけて準備中の者もすくなからずいた。
  難民不認定処分、あるいは退去強制令書発付処分など行政処分を不服として裁判所の判断をあおぐことは、当然の権利であって、出訴期間内の同意なき送還は、裁判の機会をうばう不当なものである。


5.学齢期の児童の送還
  法務省は、今回の被送還者に小学生2人がふくまれていることをあきらかにしている。7月のフィリピン人一斉送還ではなされなかった学齢期の子どもを送還したわけである。
  当然ながら、不法残留や不法入国といった入管法違反について、こうした子どもの責任を問えるような道理はいっさい存在しない。日本で育ち、学校教育を受けている子は、一般的にタイ語をほとんど話せないことが多く、送還先社会への適応には困難が予想される。彼女たちを通っていた学校から引きはがした行為は学習権の侵害であり、学校や地域の友人たちと引き裂く行為の非人道性もあきらかである。


  以上のとおり、このたびの一斉強制送還に正当性がないことはあきらかであり、以下申し入れる。

(1)  送還した46名について、本人の申請があれば、すみやかに上陸特別許可をみとめること。とくに、日本に配偶者がいる被送還者については、早急に上陸特別許可をみとめ、非人道的な家族分離の状態を一刻もはやく解消するようつとめること。
(2)  今後、チャーター機によるものもふくめ、本人の同意なく送還することはやめること。別途、申し入れるとおり、東京入国管理局執行部門の入国警備官による、暴力行為・恫喝行為が横行し、行政訴訟や難民申請を取り下げさせようとした圧迫行為すらおこなわれている。このような状況にあっては、送還の正当性はなおさらないと言わざるをえない。


以  上


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  同意なき送還について、今後とも継続して、法務省および東京入国管理局をはじめとする各入国管理局地方局、入国管理センターにたいし抗議と反対の声をあげていきましょう。



抗議先

(1)東日本入国管理センター  総務課
tel: 029-875-1291
fax: 029-830-9010
〒300-1288 茨城県牛久市久野町1766-1

(2)東京入国管理局
tel: 03-5796-7250(総務課)
Fax: 03-5796-7125
〒108-8255  東京都港区港南5-5-30

(3)東京入国管理局横浜支局  総務課
tel: 045-769-1720
Fax: 045-775-5170
〒236-0002  神奈川県横浜市金沢区鳥浜町10-7



  なお、関西で入管問題と難民支援に取り組んでいるRFIQ(在日難民との共生ネットワーク)が、今回の一斉送還について法務大臣あての抗議署名をよびかけています。

Monday, December 9, 2013

【抗議の呼びかけ】タイ人に対する一斉無理やり送還について

  12月8日(日)、「昨晩、タイ人が居室から連れ去られた」という情報が、多数、私たちのもとに入ってきました。連れ去られたタイ人が収容されていたのは、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)、東京入国管理局(東京都港区)、東京入国管理局横浜支局(神奈川県横浜市)の各収容所・収容場です。

  入国警備官によって連れ去られたタイ人たちは、航空機で8日の夕方にバンコクに強制送還されたことが、あきらかになりました。被送還者数は50人ほどであるという情報も、送還された被害者からの電話等により寄せられています。

  私たちとしてはこの同意なき送還につよく抗議するとともに、みなさまにも電話やファクシミリなどでの抗議をひろくよびかけたいとおもいます。以下、とりあえずの抗議先をあげておきます。



抗議先

(1)東日本入国管理センター  総務課
tel: 029-875-1291
fax: 029-830-9010
〒300-1288 茨城県牛久市久野町1766-1

(2)東京入国管理局
tel: 03-5796-7250(総務課)
Fax: 03-5796-7125
〒108-8255  東京都港区港南5-5-30

(3)東京入国管理局横浜支局  総務課
tel: 045-769-1720
Fax: 045-775-5170
〒236-0002  神奈川県横浜市金沢区鳥浜町10-7



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  今回のバンコクへの一斉無理やり送還の実態については、当ブログで今後あらためて報告していきますが、現時点で、被送還者のなかには、日本での滞在期間が20年以上におよぶ人が複数ふくまれている事実が、あきらかになっています。

  このブログでもくり返し指摘し、また法務省などへの当会としての申し入れでも述べてきたとおり、日本の入国管理政策は、法務省などが言うところの「不法滞在者」をあえて「不法」状態においたまま放置することで、安価でフレキシブル(いつでも首を切れる)な労働「力」を国内産業の雇用主に「供給」する、という利益誘導政策をとってきました。

  いわば非合法的に外国人労働「力」を導入してきたのは法務省・入管であって、また、とりわけバブル期にこうした非合法的な労働「力」に日本の社会・経済は依存してきたのです。

  ところが、2003年から2004年にかけて、法務省はこうした方針を一転させ、 「不法滞在者の半減5か年計画」なる計画を立て、非正規滞在労働者の徹底的な排除へと舵(かじ)をきります。2004年には、製造業分野での労働者派遣事業が解禁されております。つまり、日本政府としては、“今後は安くて首を切りやすい労働力としては派遣労働者をあらたに用意し、かれらに低賃金で不安定な労働をになってもらうので、あなたたち不法滞在者は用済みになりました”としたわけです。


  このようにして法務省は「不法滞在者」の存在が問題なのだと言い出すのですが、デタラメ・あべこべもいいところです。その「不法」状態を意図的につくりだしてきたのは法務省であり、そうして「不法」状態におかれた外国人を安く買いたたいてきたのは日本の社会・経済にほかならないのですから。

  長期滞在者、とりわけ2003~04年より以前から滞在している人を暴力で追い出すことは、それ自体が不当であり不正義です。

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  また、今回の被送還者には、日本に家族がおり、帰国すると家族が分離されてしまうケースも複数あったことが、現時点で確認されております。この点でも、このたびの一斉送還の非人道性はあきらかであり、また、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する」(第二十三条第1項)とさだめた市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)に違反する違法な人権侵害行為です。

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  さらに、現時点で、被送還者に退去強制令書取消訴訟の提訴期限(退去強制令書発付を通知されてから6ヶ月間)を過ぎていない人が複数おり、そのなかには入管にたいして訴訟提起の意思を明確にしていた人も、やはり複数人いたことがあきらかになっています。

  送還された人たちは、退去強制令書が発付されていたとはいえ、その退去強制令書発付処分とは、入管という行政機関によるものにすぎません。この行政処分を不服として、裁判所にその取り消しや無効確認を申し立てるのは、当然の権利です。

  行政訴訟の意向を明確に示している人を、いち行政機関にすぎない入管が勝手に送還したことは、裁判所を愚弄する行政機関の暴走と言うべきなのはともかくとしても、重要なのは、これが裁判の機会を不当にうばう権利侵害であるということです。

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  ところで、こうした法務省による人権をいくえにもふみにじる凶行は、法務省がさだめる人権週間(12月4日~10日)のさなかにおこなわれました。


  うえの法務省のサイトでは、「考えよう 相手の気持ち 育てよう 思いやりの心」などという人権とはなんの関係のないお題目をとなえて、法務省自身が人権のなんたるかをさっぱり理解していないことをみずから暴露しております。じっさい入管が帰国強要の手段として日々おこなっているように、「相手の気持ち」をよく「考え」ているからこそ、相手に効果的に恫喝をくわえ、虐待し、より深く相手の心にダメージを与えられるということもあるのですし。人権とは、「思いやり」ではなく、「人としての不可侵の権利を保障しろ、またそれを侵害するな」ということでしょう。

  また、人権を、「相手の気持ち」に「思いやり」をもちましょうなどという個々人の心持ちのレベル一般の話におとしこむような理解からは、法務省をはじめとする政府機関による人権侵害の問題はぼやかされ、問われなくなってしまいます。政府によるものであれ、個人によるものであれ、人権侵害は、権力関係を背景にしておこなわるものです。「思いやり」の欠如からおこる個人間のいさかいやケンカがかならずしも人権侵害をともなうわけではありません。問わなければならないのは、権力による侵害行為にほかなりません。

  すくなくとも法務省に「人権」課題をまかせておくことなどできないことは、あらためてはっきりしました。人権を法務省からとりもどしましょう。

Friday, December 6, 2013

関東仮放免者の会「宣言」/賛助会員募集とカンパのおねがい

  10月27日に、東京の板橋で関東仮放免者の会の第4回大会をおこないました。


  9月22日に病死したバングラデシュ人の仮放免者ムスタファ・カマルさん(42歳)。東京入管が医療放置したのち10月14日に死亡したロヒンギャ難民のアンワール・フセインさん(57歳)。最初に、ふたりの死をいたんで参加者全員で黙祷をささげ、大会をはじめました。

  今年は、2月の全国仮放免者生活実態アンケート調査や5月の再審情願一斉申立を通じてメディアが仮放免者問題を取り上げてくれることが増え、また報道の内容も仮放免状態の過酷さを良く理解して書かれたものが増えました。私たちの運動が社会的に注目され、仮放免者に在留資格を求めるという運動目的が社会的理解を得てきた重要な1年でした。

  一方、7月にチャーター機によるフィリピン人一斉送還がおこなわれるなど、帰国できない事情にある仮放免者および被収容者にとって、きびしくくやしさののこる年でもありました。


  入管による人権侵害は私たちの仲間を増やしてくれます。実際、第4回大会参加者の特徴として、たくさんのフィリピン人仮放免者が参加しました。しかし、犠牲者が出て仲間が増えるという構造から脱却し、犠牲者を出さないために仲間が増えていく構造への転換が求められているところです。

  大会ではまず、過去1年の情勢と私たちの足跡をふりかえり、あらたな1年の活動方針について討議しました。緊迫したきびしい局面はつぎの1年も続くだろうとの見通しから、会の機動性を高めるために組織のあり方を抜本的にみなおすことになりました。組織機構の改革に関連して、会則改正案・予算案・人事案が提起され、採決されました。

  そのいっぽうで、会の目的を明確化・再定義することにより、会員全体の目的意識の共有をはかり、よりいっそうの団結をすすめていこうという意図から、関東仮放免者の会としての「宣言」が提案され、採択されました。

  「宣言」は、大会にさきだつ2度のリーダー会議における長時間にわたる討議をつうじて文案が起草・修正され、10月27日の大会で採択されたものです。大会では、以下に掲載する日本語版と英語版を採択しましたが、今後、仮放免者それぞれが母語にしている多言語に翻訳したものをつくり、公開していく予定です。

  なお、関東仮放免者の会では、一般から賛助会員をつのり、また、賛助会員にかぎらず会へのカンパをひろくおねがいすることとなりました。会の運営は、結成以来3年間、おもに仮放免者による会費と支援者の持ち出しによってなされてきました。しかし、就労の許可をみとめられず、その住居も関東地方全体にちらばっている仮放免者が相互に交流するためにも、また支援者が仮放免者のもとにおもむくにも、より多くの資金が必要です。ご協力いただけるかたは、本記事の末尾の案内をごらんください。




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宣言

  2010年10月31日、仮放免者の会は結成されました。仮放免者の会は、仮放免者自身によってつくられ、仮放免者自身によって今日まで活動してきました。

  仮放免者は、入管から退去強制令書発付を受け、国に帰るようにさまざまなプレッシャーをかけられ、おどされながらも、帰国できない事情がある者たちです。仮放免者の多くは、入管でのきびしく長い収容生活をおくり、しかし仲間たちとともに在留資格を手に入れて日本に残ることをえらびました。

  仮放免者が帰国しない、帰国できない理由は、いろいろです。難民であること、家族が日本にいること、長く日本で暮らしてきたこと、などなど。しかし、そのようないろいろな事情のちがいをこえて、私たちは仮放免者として団結することをめざしてきました。

仮放免者に在留資格を!」

  これが、私たちが仮放免者の会をつくってから、ずっとかかげてきた目標です。たとえば「難民に在留資格を!」でもなく、あるいは「日本に家族のいる人には在留資格を!」でもありません。私たちがうったえてきたのは、「仮放免者に在留資格を!」です。

  難民も難民でない者も、入管によって人間としてあつかわれてこなかった点でおなじです。また、日本に家族がいる者も、そうでない者も、入管に「人間より下の存在」としてあつかわれてきた点でおなじです。つまり、入管、日本政府は、私たち“すべて”を人間として見ていないのです。

  だから、私たちは、“すべての仮放免者”としていっしょに闘ってこなければならなかったのです。難民も難民でない者も、結婚している者も結婚していない者も、刑務所に行った者もただのオーバーステイの者も、“すべての仮放免者”としての団結をめざさなければならなかったのです。

  立場のちがい、事情のちがいをこえて、私たちは要求します。私たちの“すべて”を人間としてあつかえ、と。そして、この私たちの要求は、日本で暮らすすべての外国人にたいする日本政府の考え方を変えさせる、という大きな目標へとつながっていきます。

  1940年代からいままで、外国人にたいする日本政府の考え方の基本は、変わっていません。それは、ひとつには「外国人には人権がない」という考え方です。もうひとつには、「外国人をどうあつかおうが、日本政府の自由だ」という考え方です。1965年に、法務省入国管理局参事官だった池上努は、自分の本で外国人は「煮て食おうが焼いて食おうが自由」だと書いています。

  また、1978年には最高裁判所が、マクリーン事件判決(*1)という、事実上外国人に人権はないと言っているにひとしい判決を出しています。マクリーン事件とは、日本に住んでいたアメリカ人のロナルド・アラン・マクリーンさんがベトナム戦争に反対する活動をしたために、入管が彼の在留許可の更新をみとめなかったという事件です。マクリーンさんは、これに納得できずに裁判をおこしました。しかし、最高裁判所は、外国人の在留期間の更新をみとめるかどうかは、法務大臣が勝手にきめてよいことで、それをきめるときにその外国人の人権なんて気にしなくてもよいのだというような意味の判決を出しました。まさに、「外国人には人権がない」「外国人をどうあつかおうが、日本政府の自由だ」という日本政府の考え方を、裁判所までもがみとめたわけです。

  この長くつづいてきた日本政府の考え方が変わらなければ、私たちは権利のある人間として日本で生活していくことはできません。たとえ、ある日、在留資格を認められたとしても、つぎの日には、在留資格をとりあげられるかもしれません。

  だから、私たちは、「仮放免者に在留資格を!」という目標のさらにむこうに、もっと大きな目標をかかげます。すべての外国人の人権が認められる社会へと日本の社会を変えていく、ということです。そのためには、「外国人には人権がない」「外国人をどうあつかおうが、日本政府の自由だ」という日本政府の考え方を変えさせなければなりません。

  この日本政府の考え方を変えさせ、日本の社会を変えるという目標に近づいていくために、私たちは、私たちより前に日本にやってきた外国人たちの長い闘いの歴史と経験から多くのことをまなぶことができます。権利をかちとるために闘ってきた彼ら・彼女らの歴史は私たちに勇気をあたえ、その経験は私たちに力をあたえてくれます。そして、私たちもおなじように日本政府の考え方と日本の社会を変えるための闘いをつづけることで、私たちの子どもたちや、私たちより後に日本にやってくる外国人たちに、財産をのこすことができるでしょう。また、外国人を差別しない社会をつくっていくことは、人間どうしの平等で自由な関係をのぞむ日本人たちにとってもよいことであると信じます。

  入管、日本政府は、私たちを人間としてあつかってきませんでした。しかし、私たちは、それぞれの事情や立場、あるいは国籍や人種や民族、思想信条や宗教、性別や性的指向などをこえて平等な人間として認めあうことができるはずです。そうしておたがいを平等な人間として認めあい、私たちのなかにある差別とも闘いながら、入管や日本政府、また日本社会にむかって主張していきます。「私たちには人権がある。私たちがここにいるのは私たちの権利である」と。

2013年10月27日  東京板橋にて
仮放免者の会(PRAJ)一同



注釈

*1  マクリーン事件判決
  長くなりますが、マクリーン事件判決から引用します。
 思うに、憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。しかしながら、前述のように、外国人の在留の許否は国の裁量にゆだねられ、わが国に在留する外国人は、憲法上わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求することができる権利を保障されているものではなく、ただ、出入国管理令上法務大臣がその裁量により更新を適当と認めるに足りる相当の理由があると判断する場合に限り在留期間の更新を受けることができる地位を与えられているにすぎないものであり、したがつて、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であつて、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。在留中の外国人の行為が合憲合法な場合でも、法務大臣がその行為を当不当の面から日本国にとつて好ましいものとはいえないと評価し、また、右行為から将来当該外国人が日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者であると推認することは、右行為が上記のような意味において憲法の保障を受けるものであるからといつてなんら妨げられるものではない。

  いま引用したところでこの判決が言っているのは、おおむねつぎのようなことです。

  1. 日本国憲法にさだめられている基本的人権は、日本に住んでいる外国人にも保障される。政治活動の自由についても、おなじく外国人にも保障される。しかし、外国人が日本に住んでよいかどうかは、法務大臣が自由にきめてよい。
  2. したがって、外国人の基本的人権は、日本の外国人在留制度のわくのなかであたえられているにすぎない(つまり、外国人に在留資格をみとめるかみとめないかについての日本政府の判断は、基本的人権を保障した憲法のわくをこえた、その外側でなされるものである)。
  3. 日本に住んでいる外国人の在留資格の更新を認めるかどうかを判断するときに、日本政府は、基本的人権についてさだめた日本国憲法の条文を気にしなくてよい。
  4. 日本に住んでいる外国人が日本の憲法や法律をまもっていたとしても、法務大臣は、その外国人が「日本にとってよくない」「日本の利益をそこなうかもしれない」と考えるならば、法務大臣がそう考えたということを理由にして、その外国人の在留期間の更新を認めなくてもよい。その場合、法務大臣はその外国人の人権なんて気にしなくてよい。

  この判決は、憲法は外国人の基本的人権を保障しているとも一応は言っています。しかし、外国人の在留期間の更新をみとめるかどうかについて、法務大臣の判断の自由をとても広くみとめています。“法務大臣の考え方しだいで、外国人の在留資格をみとめてもよいし、みとめなくてもよい。法務大臣がそれを判断するにあたって、日本国憲法の基本的人権の保障をさだめた条文にとらわれなくてもよい”と言っているわけです。これは、日本国憲法が保障している人権は、日本人だけのもので、外国人にはないのだ、と言っているのとおなじことです。
  この、法務大臣の自由、権限をとても広くみとめた1978年の判決は、いまの裁判でも入管がしょっちゅう引用しています。


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The Provisional Release Association in Japan was founded on October 31, 2010. It was created by us, the people those on provisional release themselves, and has been run by ourselves since then.

  Those on provisional release are people who have received a deportation order from the immigration authorities, are under various pressure and threats, but have reasons why we cannot go home. Most of us were detained at the immigration detention centers for a long time under harsh conditions, but chose to obtain a resident status and remain in Japan.?

  There are many reasons why we will not or cannot go home. Some of us are refugees, and some have a family in Japan, and others have lived in Japan for a long time. And yet beyond such differences of reasons, we have sought to unite as people on provisional release.

  “Resident Status for those on Provisional Release!”

This is the goal we have upheld since we founded the Provisional Release Association in Japan. It is not “resident status for refugees” or “resident status for those with a family in Japan,” for example. It is “resident status for those on provisional release” that we have been calling for.

  Refugees and non-refugees are the same in that they have not been treated as human beings by the immigration authorities. Also, those who have a family and those who do not are the same in that they have been treated as “presence below the human” by the immigration authorities. Another word, the immigration authorities and the Japanese government do not see us all as human beings.

  That is why we have had to fight as “all on provisional release.” We have had to seek unification as “all on provisional release” including refugees and non-refugees, married and unmarried people, those who were in prison, and those who merely overstayed.

  Beyond differences in positions and circumstances, we claim that we all be treated as human beings. Furthermore, our demands lead to a larger goal to change the attitudes of Japanese government toward all foreigners in Japan.

  Since the 1940s, the core of the attitudes of the Japanese government toward foreigners has not changed. It is the view that “foreigners do not have human rights,” and “it is up to the Japanese government no matter how they treat foreigners.” In 1965, Tsutomu Ikegami, a counselor of the Immigration Bureau of the Ministry of Justice, stated in his book that “we can do whatever we please with them.”

  In 1978, the Supreme Court also made a decision on the McLean case(*1), which is equal to saying that foreigners do not have human rights in effect.  It is the case that Mr.  Ronald Alan McLean, an American national living in Japan, was refused to renew the permission to stay because he was involved in anti-Vietnam War activities. Mr. McLean, unsatisfied with the decision, filed a lawsuit. The Supreme Court, however, ruled that it leaves to the discretion of the Minister of Justice whether or not to grant a renewal of a foreigner’s period of stay, and the minister does not need to consider the foreigner’s human rights when he makes decisions. Quite simply, the court also accepted the Japanese government’s view that “foreigners do not have human rights” and that “it is up to the Japanese government no matter how they treat foreigners.”

  Unless these long-lasting attitudes of the Japanese government change, we cannot live in Japan as human beings with rights. Even if we are granted a resident status one day, it may be taken away on the following day.

  Therefore, we have a larger goal beyond “resident status for those on provisional release,” which is, “we seek to change the Japanese society into the one in which human rights of all foreigners are respected.” In order to achieve this goal, we need to change the government’s view that “foreigners do not have human rights” and that “it is up to the Japanese government no matter how they treat foreigners.”

  Now, to change the government’s views and the Japanese society as well, we can learn various things from the long history of struggles experienced by the foreigners who came to Japan before us. The history of their struggles to win the rights gives us courage, and their experiences give us strength. As we continue fighting to change as our predecessor did, we will be able to leave assets to our children and others coming after us. We also believe that it is good even for Japanese who hope to have an equal and free relationship with others as human to create a society without any discrimination against foreigners .

  It is true that the immigration authorities and the Japanese government have not treated us as human beings. Beyond those differences in circumstances, positions, nationality, race, ethnicity, ideology/beliefs, religion, sex, and sexual orientations, however, we should be able to acknowledge each other as equal human beings. Therefore, while acknowledging each other as equal human beings and fighting against any thoughts and attitudes of discrimination within ourselves, we argue toward the immigration authorities, the Japanese government, and the Japanese society that “we have human rights. It is our rights to be here.”
 
October 27, 2013.
Itabashi, Tokyo.
Members of the Provisional Release Association in Japan


Note
1. The ruling of the Mclean case
  Let us quote from the ruling of the Mclean case at length:
It should be understood that the guarantee of fundamental rights included in Chapter Three of the Constitution extends also to foreign nationals staying in Japan except for those rights, which by their nature, are understood to address Japanese nationals only. This applies to political activities, except for those activities which are considered to be inappropriate by taking into account the status of the person as a foreign national, such as activities which have influence on the political decision-making and its implementation in Japan. However, as mentioned above, permission of sojourn of foreign nationals in Japan is left to the discretion of the state. Foreign nationals staying in Japan are not guaranteed the right to stay in Japan or request to continue to stay in Japan under the Constitution, and merely granted a status by which they can have the period of stay renewed only when the Minister of Justice, by his discretion, determines that there is a "reasonable ground to acknowledge that the renewal of the period of sojourn is appropriate." Guarantee of fundamental rights to foreign nationals by the Constitution should be understood to be granted only within the scope of such a system of the sojourn of foreign nationals and does not extend so far as to bind the exercise of discretionary power of the state, i.e. does not include guarantee that acts which are guaranteed as fundamental human rights under the Constitution during the sojourn should not be considered as negative circumstances in renewing the term of sojourn. Even if the activities of a foreign national are constitutional and lawful, the Minister of Justice is by no means hindered from assessing those activities as undesirable in terms of appropriateness for Japan, and from assuming from such activities that this foreign national may act against the interest of Japan, despite the fact that such activities of the foreign national are guaranteed by the Constitution in the above sense.

  What the ruling says here is basically the following:

  1. Foreigners in Japan are guaranteed the basic human rights in the Japanese Constitution. Political freedom is also guaranteed for foreigners.
  2. However, the Minister of Justice gets to decide whether a foreigner can stay in Japan.
  3. Therefore, the basic human rights for foreigners are merely granted within the frameworks of the visa system (that is, the decision of the Japanese government of whether to grant a resident status for a foreigner is made outside the Constitution, which guarantees the basic human rights).
  4. The Japanese government does not have to consider the articles of the Constitution on the basic human rights when they decide whether to grant a renewal of the resident status of a foreigner living in Japan.
  5. The Minister of Justice can refuse to renew the period of stay of a foreigner living in Japan even if he or she obeys the Constitution and the laws of Japan, if the Minister thinks that he or she is “not good for Japan” or “may hurt the interests of Japan.” In such cases, the Minister of Justice does not have to consider the human rights of the foreigner.

  In a fashion, this ruling states that the constitution guarantees the basic human rights for foreigners. However, it recognized the discretion of the Minister of Justice very broadly as to whether he grants the renewal of the period of stay of a foreigner. It basically says that the Minister of Justice can choose to grant or not to grant a resident status for a foreigner at his will, and that he is not bound by the articles of the Constitution which guarantees the basic human rights when he decides.” This is equal to saying the human rights guaranteed by the Constitution are only for Japanese, not for foreigners.

  The ruling of 1978, which recognized the discretion and authority very broadly, is often cited by the immigration in courts.




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賛助会員のご案内

  関東仮放免者の会では、あらたに賛助会員の制度をもうけることにしました。賛助会員は、月一口500円の賛助会費を支払うことで、どなたでもなることができます。なお、賛助会費は何口でも支払うことができます。

  上の「宣言」や当ブログで報告している会の活動にご賛同いただけるかたは、賛助会員としてご協力いただけるとさいわいです。下記のメールアドレスまでご連絡ください。

junkie_slip999@yahoo.co.jp



カンパのおねがい


  上記賛助会員のかたでなくても、会に賛同していただけるかたに、可能なときに無理のない範囲で、以下の口座にカンパをいただけるとありがたいです。

    ゆうちょ銀行  記号10560  番号  22655891
    口座名  カリホウメンシャノカイ

  郵便局以外から振込する場合は、
    店名  〇五八(読み  ゼロゴハチ)    店番 058
    普通預金  口座番号  2265589

  これまでも、被収容者のハンストのおり、また、重病の仮放免者のために、私どものカンパの呼びかけにたいし、たくさんのかたがあたたかく応じてくだりました。また、定期的にカンパをふりこんでくださるかたもいらっしゃいます。みなさんのご協力にこれまでもささえられながら、当会は活動してきました。私たちとしても、支援してくださるみなさんのご期待を裏切らないよう、今後とも奮闘していく所存です。
















Wednesday, November 20, 2013

フセインさん死亡事件について、ジャパンタイムズが報道



  フセインさん死亡事件について、ジャパンタイムズが11月3日に記事を掲載しております。記事の日本語訳を掲載します。

  注目すべき点として、東京入国管理局の広報担当が、「職員の取った行動に不適切な点はなかったと信じる」とジャパンタイムズ記者に答えていたことが、記事によりあきらかになりました。

  これまで、本ブログのいくつかの記事で述べてきたとおり、東京入管職員は、フセインさんが意識不明の状態にあることを認識しながら、救急車の出動要請をするまでに1時間近くも要しています。これは、東京入管も認めている事実です。「職員の取った行動に不適切な点はなかった」と考えるのは、あまりに無理があるように思えます。

  東京入管として、あるいは入管組織全体として、今回の事件を徹底的に検証し、根本的な改革にとりくむのでなければ、フセインさんのような犠牲者が今後とも出続けるのは必然です。その意味でも、東京入管および国の責任は、徹底的に追及されなければなりません。


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「失敗した難民申請者たち」への制度
2013年11月3日  ジャパンタイムズ日曜版


●NGO、医師の不在を非難
●通り一遍の医療チェック
●ミャンマーの難民の死、怒りを喚起


大崎ともひろ記者(スタッフライター)


  東京入国管理局(品川)でのミャンマー人収容者の直近の死は、全国的な慢性的な医療スタッフの不足の下での難民申請者の直面する医療措置の不適切さを際立たせると、専門家は言う。

  迫害されたロヒンギャ民族の一人である57歳のアンワール・フセイン氏は、10月9日、適切な医療行為を否定されたままくも膜下出血で倒れた。ミャンマー難民を支援する東京に本部を置くNGO、ビルマ人民フォーラムによると彼は食べ物を吐き、発作を起こし正午ごろ意識を失ったと言う。

  彼の同房の他の収容者たちは、何回も入管職員に助けを求めた。しかし、伝えられるところでは救急車と医師を呼べという彼らの要求は、医師が昼食中という理由で無視されたと上記NGOは言った。医師が現れた時には約50分が経過していた。そして入院後、10月14日にフセイン氏は死亡が確認されたと、彼らは言った。

  「彼は、彼が倒れる当日の午前中ずっと(入管職員に)頭痛を訴えていた。しかし、職員は彼に全く無関係な薬を与えた。」と、彼の日本における唯一の親類である従弟のマウン・フラ・マウンは言った。「彼らの対応は緩慢で憐みでしかなかった。」
入管問題の専門家たちは、何年も日本の入管施設を悩ませてきた医療崩壊の長く退屈な説明の直近の悲劇としてこの事件を非難した。

  横浜に拠点を置き、収容所の難民申請者たちに面会している医師山村淳平によると、東京と茨城県牛久市の入管収容所で最近少なくとも入管職員が適切な医療検査を行わなかったために隔離に失敗した2件の結核感染事件があったという。


専門家たちはフセインさんの悲劇を日本の入管を悩ませてきた医療崩壊の直近の長く退屈な説明として非難した。

  元入管被収容者の団体であるPRAJ・仮放免者の会は、5月牛久入管に医療状況の改善を求める申立書を提出し、崩壊の渦中にある医療制度を非難した。

  申立書は、一部言葉の壁のために十分な同意なく、1回の手術で6本の歯を抜かれた女性の被収容者にも言及した。手術は、非常に痛くその後彼女は十分にものが食べられなくなった。

  アンワール・フセイン氏の死に対して、東京入管の多くの被収容者たちが直ちに「医療の専門家でもない者による独断的な判断の中止と医師による不適切な診療の改善を求める」申立書を提出した。

  「病気を感じるとすぐに我々は、職員にどこが悪いか告げ、彼らは我々を診る。しかし、彼らは医師の資格がないのでしばしば効かない薬を我々に与えて終わりにする。」と手書きの日本語で書かれた申立書は述べ、治療の遅延は心臓の痛みを含む最も深刻な訴えに対応するのを妨げるとも述べている。

  「我々は1、2週間ほったらかしにされる」と申立書は述べる。

  仮放免者の会のメンバーである宮廻満は彼らの主張を再言する。健康の危機を医師が実際に診なければならないと職員が認めるまで、否その時でさえ診察を受けるまで簡単な様子見しか行われない。と宮廻は言った。

  「数人の医師は、被収容者の声にさえ耳を傾けず、鎮痛剤を与えて急いで診察を終えようとする」と彼は言った。

  彼はまた、入管の医師たちは彼らの医学的判断を入管の職員のメモに求め、自分自身の判断を行わないと申立てた。

  宮廻はさらに医学問題に精通したプロの通訳の救いがたい人材不足を非難した。また入管は概して、被収容者を単に日本の法律を比較的自由に使いこなすために利用できる道具としてしか扱っていない、と彼は言った。

  医師不足は激しい。

  東京入管では、フルタイムの医師は月、水、金交代で勤務するのみだと広報担当の浅井祥子は言った。

  このパートタイムスケヂュールの批判に対して、浅井は(医師がいない時でも)救急車の呼び出しは保障されていると言った。

  しかし、問題は明らかにそこで終わっていない。ビルマ人民フォーラムの中野あきは、医師は被収容者の訴えが彼らの知らない医学的問題であれば、時として被収容者の訴えに耳を貸さないと言った。

  宮廻は、素早い行動があればアンワール・フセイン氏の死は防ぐことができたと信じている。

  「彼に起きたことは、明らかに入管の職員が被収容者の健康をとるに足らぬものと考えていることを示している。」と言った。「これは氷山の一角に過ぎない。入管は直ちに医療の責任から逃れるな。さもないと別のアンワール・フセイン氏を生むだろう。」

  アンワール・フセイン氏は、2006年庇護を求めて日本に逃げてきたが不法入国で捕まった。9カ月の収容の後、彼は人道的理由で仮放免を与えられ名古屋に移動した。そこで彼は職を得た。しかし、仮放免の外国人は働くことが許されていない。

  彼は、10月9日仮放免の延長を求めて東京入管に出頭した。しかし、最早資格がないと告げられ再収容され数時間後に倒れた。

  東京入管の浅井は、警備官が被収容者が何度も救急車と医師を呼べと言ったことを無視したこと、また両者の到着に何分ぐらいかかったのかをふくめ、「プライバシー」を理由に彼の死の細部の確認を拒否した。

  「私は、状況に対して職員の取った行動に不適切な点はなかったと信じる」と浅井は言った。

  伝えられるところでは、アンワール・フセイン氏の妻と2人の子供は日本政府を訴えることを考えているという。



写真:アンワール・フセイン氏 (提供  仮放免者の会)

写真:数少ない幸運。ミャンマーから別の4組の家族が国連の第三国定住で9月日本に来た。日本に来る大多数の難民が個人的に政治難民を申請し、しばしば来日するや否や入管に収容される。アンワール・フセイン氏(57歳)の死後、入管での医療体制の不適切さが批判されている。(配信  共同通信)

(翻訳 仮放免者の会 増田博光) 


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Monday, November 18, 2013

【プレスリリース】 「11.20 東京入管に抗議するデモ」のお知らせ

  先日、以下で告知しているデモについてのプレスリリースです。
  ツイッター、フェイスブックなどで拡散していただけるとさいわいです。
  取材されるかたは事前に文末の連絡先にご一報いただけると助かりますが、連絡なしに当日取材に来ていただいてもかまいません。



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【プレスリリース】
「11.20 東京入管に抗議するデモ」のお知らせ

 1014日、ビルマ出身のロヒンギャ難民、アンワール・フセインさん(57歳)がくも膜下出血により死亡しました。フセインさんは、東京入国管理局(港区)に収容された同月9日に倒れました。ところが、入管側はフセインさんの容態を認識しながら、約1時間もの間、救急車を呼ばずに放置しました。
  1120日(水)、フセインさん死亡事件を受けて、東京入管に抗議するデモをおこないます。また、同日、東京入管への申し入れもおこなう予定です。
  結果的にフセインさんを死にいたらしめた東京入管の対応について、おもに以下の問題が指摘できます。
1.被収容者の人命と健康を軽視する入管の組織的体質
    フセインさんは倒れたとき、あわをふいて痙攣した状態だったと同室の複数の被収容者は証言しています。職員がフセインさんの容態の異常を認識したのが1220分頃。1226分に職員が測定した際には、フセインさんの血圧は、上242111であったといいます。ところが、入管側が救急車の出動をようやく要請したのは、1315分。
    常識的に考えて、このような容態の人をみた場合、即座に医者にみせるか、それができないならば救急車を呼ぶというのが当然とられるべき対応であって、そうした対応がとられなかったことに、被収容者に対する入管の人命軽視の体質があらわれています。

2.劣悪きわまりない医療処遇
    東京入管をふくめた入管収容施設では、入国警備官が被収容者の診療の要不要を判断するということが横行しています。被収容者が体調不良をうったえ診療をもとめても、入国警備官の判断で診療させないといった事例が多数あります。被収容者数にみあった医療体制(診療できる日数や外部診療機関に連行するための人的な準備)がとられていないために、診療件数を抑制することが入国警備官の「任務」となっていると言うことができます。

3.収容をつうじた帰国強要
    フセインさんは、難民認定審査中であり、またビルマ当局が国籍付与の対象から排除しているロヒンギャ民族でもあります。難民条約の規定からいって送還不可能であるばかりでなく、万が一、入管が送還を試みたとしても、ビルマ政府がこれに応じるとは考えられません。なぜ、そのような人を再収容(フセインさんは2回目の収容です)したのか。監禁によって心身をいためつける以外の目的は想定しにくいです。収容(監禁)を帰国強要の手段にしているとも言ってよい、入管の退去強制執行のあり方も問われなければなりません。

4.きわめて消極的な難民行政
    フセインさんは上記のとおり事実上の無国籍者であり、亡骸になってしまってなお「帰国」の不可能な難民でありました。難民認定ないしは在留特別許可によって早期に在留資格が付与されていれば、今回のような不幸な事態はふせげたはずです。


  デモには、「仮放免者」と言われる、退去強制令書を発付されながらも帰国できない事情(難民であること、日本に家族がいること、滞在が長期にわたり国籍国に生活基盤がすでにないことなど)があり、日本での在留資格を求めている人びとが多数参加します。

 
また、医療放置は東京入管では常態化していることもあり、現在の被収容者からも連名での要求書が出されるなど、医療処遇改善を東京入管にもとめる動きもおこっています。こうした被収容者に激励の声をとどけることも、今回のデモの目的として位置づけています。


要綱
  1120日(水)   13:00  品川駅港南口、入管行きバス停前広場集合
14:00  デモ行進開始
15:30  東京入国管理局に対する申し入れ
主催  関東仮放免者の会
連絡先  090-3549-5890(大町) 090-2910-6490(永井) 090-6547-7628(宮廻)

Wednesday, November 13, 2013

11.20 東京入管に抗議するデモ――アンワール・フセインさん死亡について

  11月20日(水)にデモをおこないます。

  デモの趣旨は、東京入国管理局(東京都港区)に収容されたアンワール・フセインさんが、医療放置させられたのち、死亡した事件について、東京入管に抗議することです。


  フセインさんの死亡は、東京入管にいま収容されている人たちにも大きな衝撃をあたえております。フセインさんの事件であらわになったずさんな医療処遇、医療放置の実態は、
入管収容施設において常態化した「日常」でもあります。


  20日のデモでは、入管に抗議の声をぶつけるとともに、被収容者たちに激励の声を届けます。





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東京入管に抗議するデモ
アンワール・フセインさん死亡について

  10月14日、ビルマのロヒンギャ難民、アンワール・フセインさんが病院で亡くなりました。くも膜下出血でした。
  フセインさんは、10月9日に東京入管に再収容され、その日に倒れました。ところが、入管は彼を医者に診せずに放置し、ようやく救急車を呼んだのは約1時間も経った後でした。
  仮放免者の会(PRAJ)では、フセインさんの死について東京入管に抗議するデモをおこないます。

集合場所:品川駅港南口、入管行きバス停前広場
集合時間:13:00
主催:仮放免者の会(PRAJ)


連絡先:
みやさこ:090-6547-7628
おおまち:090-3549-5890
ながい:090-2910-6490
Elizabeth(English available):080-4163-1978


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A Protest Demonstration against Tokyo Regional Immigration Bureau
Regarding the Death of Mr. Anwar Hussin

Mr. Anwar Hussin, a Rohingya refugee from Burma died in a hospital on October 14 due to a subarachnoid hemorrhage.
He fell down right after he was re-detained in the Tokyo Regional Immigration Bureau on October 9.  The officers at the Immigration Bureau, however, left him without calling for a doctor, and it was almost after one hour when an ambulance finally arrived.
We, “Kari-houmensha no kai” (the Provisional Release Association Japan) will hold a protest demonstration against Tokyo Regional Immigration Bureau regarding the death of Mr. Hussin.


Meeting Place:In front of the bus stop to the Tokyo Regional Immigration Bureau in Konan Exit of Shinagawa Station
Meeting Time: 1:00 p.m. Wednesday, November 20
Organizer:Kari-houmensha no kai (Provisional Release Association Japan)


For More Information:
Miyasako : 090-6547-7628
Omachi : 090-3549-5890
Nagai : 090-2910-6490
Elizabeth(English available) : 080-4163-1978








Tuesday, October 29, 2013

医療放置は「日常的に行なわれている」――東京入管被収容者による「要望書」

  東京入国管理局の被収容者(Iブロック)が、局長あてに10月22日付けで医療処遇を改善する「要望書」を提出しました。「要望書」は、19名10国籍(スリランカ、ブラジル、フィリピン、ナイジェリア、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、タイ、ガーナ、ペルー)の連名で出されております。

  東京入管では、収容されていたロヒンギャ難民のアンワール・フセインさんが、医療放置されたのち、10月14日に死亡する事件がありました。
  このフセインさんの死は、上の申入書でも述べたとおり、他の被収容者やその家族、友人の間に「自分も(自分の家族、友人も)病気になり倒れたときには医師に診せてもらえず、救急車も呼ばれないまま命を落とすのではないか」といった激しい動揺と恐怖、入管に対する不信感をひきおこしています。

  「要望書」は、外部からの監視の目の届きにくい入管収容施設の医療体制についての、きわめて具体的な報告にもなっており、その点でも非常に貴重なものと言えます。



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東京都港区港南5-5-30
東京入国管理局内
東京入国管理局長殿

平成25年10月22日
東京都港区港南5-5-30
東京入国管理局内
Iブロック内長期収容者


要  望  書

私達は、難民、日本人配偶者、日系人、家族の生活などさまざまな事情によって特別在留許可の申請、難民申請や退去強制令書の取消訴訟等などの理由によって収容されている者です。Iブロック内においては長い者で8ヶ月以上の長期間にわたって収容されている者もいて、現在東京入国管理局内において医療関係に関して、かくブロックの医療に関する何の知識も何の資格も持っていない素人の職員による身勝手な判断や、東京入国管理局内での勤務している医者による不十分な診断、又は病状にあった適切な診査をせずに薬を出すことによって、私達の病状は相当悪化しており、事実最悪の事態になっております。具体的には、私達の体調不良や病気になった時にかくブロックにいる担当職員に申し出をし医務診察してもらうことになっていますが、かくブロックにいる、介護又は看護などといった医療関係に関する何の資格も持っていない素人の職員の判断でわけわからない薬を飲ませるだけでなく、たとえ心臓の痛みを訴えてもすぐに診察させずに一、二週間放置させられます。

私達は体調不良を訴えてから二週間以上の時間がたったあとに医務診療を受けることになっても、医務室に連行される前に入管の職員に言われる症状以外の症状を医者に話さないようにと注意された上で医務室に連行され、医務室内においても医者が体にふれて診断したり、詳しい症状を聞いた上で診断したりすることはほとんどありません。又は病状にあった適切な診査を行なった上で薬を投与するのではなく医者と入管の話し合いで病状は何であろうと皆に同じ痛み止めを与えるだけで適切な治療してもらえないのは現在の状況です。

又は、緊急事態になっても医者でもない素人の職員の身勝手な判断によりいつ死んでもおかしくない状況になるまで何時間も放置させられているのは、現在東京入国管理局内において日常的に行なわれているとのことです。

東京入国管理局に収容させられている以上は、私達の健康状態や病気に関して適切な治療をさせる義務や責任が法的に東京入国管理局にあることは言うまでもないことなのですが、現時点で東京入国管理局側はその義務をはたしていません。

人間が疾病を治癒させるために適切な治療を受けることが出来る権利は、人間の尊厳から発する最も根本的な権利であり、憲法25条の生存権の自由権的側面として保障される権利であることは明白である。こういった憲法で保障されている根本的な人権を東京入国管理局によって侵害されていることは一切許しません。

(1)かくブロックにいる介護、看護などと言った医療関係に関する資格を持っていない素人の職員による判断で薬を飲ませるのは止めさせ、申し出た者を直(ただち)に医務診療をさせること。

(2)医務診察を希望する者については少なくても一週間に一度、医務診察を行うこと。

(3)医務診察の際に医者が必ず患者から症状を聞き、患者の体にふれてきちんとした診察し、又は病状にあった適切な診査(レントゲンやM.R.Iなど)を行なった上で病状にあった薬を与え治療させること。

(4)東京入国管理局内で治療することが不可能な場合に、痛み止めなど投与し様子を見るなどと言って長びかせるのではなく、直(ただち)に外部の病院で治療させること。

(5)緊急事態になった場合、又は医者の不在の場合に救急車を呼ばずに医者でもない素人の職員の身勝手な判断により長時間放置されている行為を止めさせ、直に救急車を呼び病院に搬送させ治療させること。

私達は入所した時の健康な身体で出所することを強く望んでいる。
以上のところ改善させ、現在東京入国管理局内にある医療問題を直に改善せよ。

[以下、氏名・国籍等の欄――省略]

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【補足】
  以上、紹介したIブロックの被収容者の「要望書」からは、東京入管の医療処遇のきわめてずさんな実態がうかびあがってきます。
  • 診療が必要か不必要かという判断を、職員(入国警備官)がおこなっていること
  • 入国警備官の判断で、あるいは医師の十分な診察がおこなわれないままで、薬が出されていること(医師法が禁ずる無診療投薬*1の疑いあり)
  • 被収容者が問診で医師に話してよい内容について、入国警備官が制約をくわえていること
  東京入管の収容場をふくむ入管収容施設では、重病者が必要な診療を受けられずに何週間も放置されるという事例にこと欠きません*2。上記のような実態からみてとれるのは、各入管収容施設が質量両面で十分な医療体制をそなえておらず、それゆえ診療件数を抑制することが入国警備官の「任務」になっているという現状です。つまり、診療日(東京入管では医務診療は月・水・金のみ)や、外部診療のための連行の態勢といった医療体制の限界をこえて被収容者を受診させないようにすることが、現状において入国警備官の「仕事」になっているということです。亡くなったフセインさんが、意識不明の状態で約50分ものあいだ放置されたことの背景には、こうした入管収容施設の医療処遇の問題があったと考えざるをえません。

  「要望書」が述べるとおり、「人間が疾病を治癒させるために適切な治療を受けることが出来る権利は、人間の尊厳から発する最も根本的な権利」にほかなりません。被収容者は入管によって身柄を拘束され、自由に病院まで行くこともできなければ、他の被収容者が病気やケガに苦しんでいても病院に連れていくこともできません。したがって、被収容者のうったえがあれば、すみやかに診療を受けさせることは、収容主体である入管の義務であって、それができないならば、収容をやめるべきです。

[注]
*1  医師法第20条「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」

*2  同意なく一度に6本の抜歯/骨折を70日以上も放置(東日本入管センター)参照。




Saturday, October 26, 2013

急死した被収容者に対する東京入管の医療放置などについての申入書

  ロヒンギャ難民のアンワール・フセインさんが、東京入国管理局(東京都港区)に再収容され、医療放置されたのち、亡くなった件について、10月25日に文書での抗議・申入れをおこないました。申入書の全文を掲載します。

  なお、先日の記事ではフセインさんを「Aさん」と表記していましたが、ご遺族のご意向を受け、実名を公開することとしました。


  仮放免者の会としては、みなさまに東京入管への抗議をよびかけます。事実関係などについては、以下の申入書をご参照ください。

抗議先
  • 東京入管総務課電話  03-5796-7250
  • 東京入管代表ファクス 03-5796-7125 


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申 入 書

2013年10月25日

法務大臣 殿
法務省入国管理局長 殿
東京入国管理局長 殿
仮放免者の会(関東)

 

 2013年10月9日、12時20分すぎ頃、ミャンマー(ビルマ)人男性でロヒンギャ民族の、Anwar Hussinさん(1957年4月7日生まれ、以下「フセインさん」という。)が東京入国管理局(以下「東京入管」という。)のD-6号室で倒れ、搬送先の病院で「動脈瘤破裂によるくも膜下出血」で10月14日、4時21分に死亡した。フセインさんは、ビルマで迫害を受け逃れてきたロヒンギャ民族であり、難民申請をしていた。フセインさんは、2006年12月28日以降、7年近く仮放免の状態にあり、2013年10月9日に再収容された。我々仮放免者の会は、フセインさんの再収容からフセインさんが東京入管で倒れ、搬送先の病院で死亡するに至った経緯における東京入管の対応に対し、強く抗議し以下申し入れを行う。


(1)フセインさんは、10月9日、12時20分すぎ頃、D-6号室で嘔吐し体を痙攣させ、意識不明の状態になった。12時22分には同室の被収容者達がブザーを押し東京入管職員を呼んだ。職員は1~2分後に同室に来て、フセインさんの血圧を測る等した。東京入管処遇部門が当会及び当会の支援するフセインさんの遺族に説明したところによると12時26分に職員が測定した際には、フセインさんの血圧は、上242下111であったという。フセインさんは、常識的に考えてもただちに救急車を呼び病院に搬送すべき状態であったにもかかわらず、東京入管はこうした措置を行わず、同処遇部門の説明によると、12時50分にはフセインさんをGブロックの単独房に隔離する等しており、最終的に119番して救急車を呼んだのは13時15分とフセインさんの血圧測定時からしても50分近くが経過してからであったという。フセインさんがD-6号室にて意識不明で倒れている間、同室の被収容者達によると、同室の者達が直ぐに医師に診せるか救急車を呼ぶように職員に対し繰り返し求めたにもかかわらず、職員達は「医者は食事中なので来れない。」「癲癇なので大丈夫。」等と言い、取り合わなかったという。東京入管側はこのような職員の発言は「なかったものと信じる」としているが、こうした発言が実際にあったかどうかはひとまず措くにしても、フセインさんがこの時点ですでに生命の危険のある重篤な状態にあったことは、上記経緯に照らしてみても明らかであり、一連の東京入管の対応は被収容者の人命を著しく軽視するものであったといわざるを得ない。現在、被収容者及びその家族、友人の間には「自分も(自分の家族、友人も)病気になり倒れたときには医師に診せてもらえず、救急車も呼ばれないまま命を落とすのではないか。」といった激しい動揺と恐怖、入管に対する不信感が広がっている。フセインさんのような重篤な状態にある者は速やかに医師に診せ、その判断を仰ぐ事、医師が不在の際にはただちに救急車を呼び病院に搬送する事はごく常識的な対応である。これら常識的な事が然るべく果たされるように強く申し入れる。

 一般的には嘔吐や痙攣、意識障害があれば脳の障害が考えられるので一刻も早く救急車を呼ぶべきであり、病院への搬送の遅れが生死に直結する事は当然である。病院への搬送の遅れと死亡の因果関係は、今後明らかにしていかねばならないが、これをひとまず措くにしても、今回の東京入管の対応の遅れには著しい人命軽視に基づく重大な誤りがあるといわざるを得ない。当会では東京入管に対し、なぜこのような非人道的対応がなされたのかに関する全面的な真相究明と再発防止策の徹底と公表を求めると共に、今回の事態を招くに至った責任を負う者への処罰、遺族に対して今回の対応がなぜ、誰によって取られたかに関する詳しい説明と謝罪を強く申し入れる。

 同室の被収容者達が、フセインさんを医師に診せるか救急車を呼ぶように求めた際、職員達が「癲癇なので大丈夫。」等と言い取り合わなかったという事に関してだが、これには医師でないものが診断を下していたという極めて重大な問題がある。この発言はなかったと東京入管は言うようであるが、この発言がもし万が一なかったにしても、同局処遇部門の説明によれば、同局では、月・水・金しか医師は来ておらず、医師不在時には、体調不良を訴える等する被収容者の健康面に関する判断は常習的に同局職員が行っているという。医師でない者が実際に医療的判断を行なっているという事実は動かしようがない。週7日終日医師が常駐する事が望ましいが、仮に医師が不在の場合であっても入管職員が被収容者の病状を過小に評価し医療的な処置が遅れるような事があってはならない。フセインさんのような痛ましい犠牲者を今後一人たりとも出す事のない様、救急医療体制及び通常の医療体制の整備を強く申し入れる。

 今回の東京入管による対応の背景には収容されている外国人に対する、人命軽視、差別、蔑視が入管内部に根深く存在するのではないかというのは、被収容者達の多くから聞かれる意見である。すなわち「もし外で日本人がこうした状況にあったならば直ぐに救急車が呼ばれるはずだ。そうならなかったのは外国人を差別し、死んでもいいと感じているからだ。」というものである。こうした感情を被収容者が持つに至った理由としては、今回の事件のみならず、日ごろの被収容者に対する職員の言動、態度、体調不良を訴えても病院に行かせないか、診察まで何週間も待たせるといった対応があげられる。このような感情を被収容者達に抱かせることのないよう、東京入管には、適切な医療体制の整備、職員への教育の徹底を求める。

 入国管理局には外国人を収容する以上、被収容者の生命、安全、健康を守る収容主体責任がある。フセインさんのような状態の者はただちに医師に診せ、医師が不在の際には即座に救急車を呼ぶことは当然であるが、体調不良を訴える者は医師に診せ、病気の者には適切な医療を提供する事、病状が重篤な者はただちに仮放免する事を求める。東京入管には収容する以上、被収容者の生命、安全、健康を守る責任を果たすよう重ねて申し入れる。


(2)ロヒンギャ民族がビルマで国籍を認められておらず、移動、就労、結婚等の自由を著しく制限される等、迫害を受けていることは周知の事実である。フセインさんは、ロヒンギャ民族であり、ビルマでの迫害を逃れて来日したものである。フセインさんの死亡に際しては、東京入管から遺体の送還を在日ビルマ大使館に打診するも拒否されたという話も聞いている。入管は、フセインさんを存命中のみならず、亡くなられた際にもビルマに送還する事が出来なかった。この事実は、フセインさんが難民認定されるべき、或いは難民認定されないにしても在留特別許可されるべき対象者であった事を明らかに示すものである。もしフセインさんが、入管により然るべく難民認定、或いは在留特別許可を付与されていたならば今回のような不幸は起こらなかった。フセインさんは、入管の極めて消極的な難民政策の犠牲者であると考える事が出来る。ロヒンギャ民族のみならず、難民申請者に対してはUNHCR難民認定基準ハンドブックに従って、難民認定或いは在留特別許可を付与して救済していく事を申し入れる。


(3)フセインさんは、2006年12月28日以降、7年近く仮放免の状態にあり、2013年10月9日に再収容された。再収容理由については、当会及び当会の支援するフセインさんの遺族に対して、東京入管から明確な回答は得られておらず判然としない。これについては当会及び遺族に対する明確な回答を求める。当会が掌握した情報の範囲では、フセインさんが再収容される前の状況からして東京入管はフセインさんが指定住居以外の場所に勝手に転居したと認識してこれを事由として再収容したと考えられる。しかし収容は生命にもかかわる重大事である。居住地の届出に関しては、届出に問題があるならば指導すればいいのであって、もし仮にこの事をもって収容したのならば明らかにいき過ぎであり、収容権の乱用である。フセインさんは逃亡したわけではなく、東京入管への出頭日には出頭しており、このような指導は充分に可能である。また、難民不認定異議申立棄却や行政訴訟での敗訴確定を契機とする退令仮放免者への再収容、また、行政訴訟での敗訴確定後、再審情願を申し立てている者等については、当人の帰国出来ない事情を十分に考慮した上、再収容を行わないよう強く申し入れる。行政訴訟等において敗訴が確定した場合でも、難民申請者や日本に家族がいる者等、どうしても帰国出来ない事情を抱えた者に対する収容、とりわけ再収容は被収容者、及び家族に人生を絶望させ、自殺未遂や疾病、或いは自殺といった最悪の事態に帰結する可能性のある重大な人権侵害である。フセインさんの件に関しても、再収容による極度のストレスが高血圧を引き起こし、脳の動脈瘤破裂に至った可能性は十分ある。再収容を行うにあたっては、細心の上にも細心の注意が払われるべきである。


(4)フセインさんを含めた仮放免者達は、自身の難民性のため、愛する家族との生活のため、病気の治療のため、または自身が長年かけて築いてきた生活、人間関係、社会とのつながりを守るため等、それぞれの理由のために日本での生活を希望している者である。彼ら、彼女らにはどうしても帰国出来ない理由、断ち切りがたい絆が日本に存在している。2010年の西日本、東日本両入国管理センターでの大規模ハンスト、東日本入国管理センターでの被収容者の相次ぐ自殺、国費無理矢理送還中にガーナ人男性が死亡した事件、退令仮放免者によるデモ、2012年におこった東日本入国管理センターでのハンスト等は、入管が退去強制手続きにおいて収容や再収容、送還といった暴力的方法に固執し対処しようとすることの限界を明らかに示すものである。仮放免者の問題についても、帰国出来ない退令仮放免者の事情を知りつつこれを斟酌することなくなお繰り返しの収容、送還に固執しようとすれば、そこには必ず無理が生じ、今回のような人の生命にかかわる事件を生じさせる原因ともなる。仮放免者問題に対し、入管が再収容、送還に固執することは退令仮放免者及びその家族の心身を収容によって単に痛めつけるためのものにしか過ぎず、退令仮放免者の抵抗や自殺や今回のような事件を含む痛ましい犠牲者を再び生み出すことにつながるのみで問題の解決には到底なりえない。我々仮放免者の会は、帰国出来ない退令仮放免者(①UNHCR難民認定基準にそった難民申請者②日本に家族がいる者③日本に生活基盤が移っている移住労働者)については本邦への在留を認めることで救済するよう強く申し入れる。



以 上
  

Thursday, October 24, 2013

東京入管被収容者の給食拒否ストライキについて続報

  おそくなりましたが、先日このブログで報じていました、東京入国管理局の被収容者による給食拒否ストライキ(以下のリンク先参照)について、その後の経過について報告します。


  前回の記事では、ストライキにはIブロックの被収容者30名近くが参加していると報告しましたが、これにくわえてJブロックの7名も同時に参加していたことがわかりました。

  これに対し、東京入管側は、職員が各部屋をまわって、給食にカレーピラフやわかめご飯などの新しいメニューを導入すること、購入できる品目を6種類増やすことなど、こんご改善をはかっていくことを説明したそうです。

  これを受けて、ストライキ参加者側は、「しばらく様子をみる」として、4日(金曜)の朝にストライキをいったん解除しました。

  私たちとしても、東京入管が実際に改善にとりくむのか、注目したいとおもいます。

  以下、ストライキに参加したIブロックの被収容者のみなさんが東京入管局長にあてた書面です。


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東京入国管理局局長殿

  東京入国管理局に収容されている者の代表として、食事等に関する改善要望でのご対応、働き掛けについて、心からお礼を申し上げます。

  平成25年9月24日付けで、東京入国管理局局長殿へ提出した食事に関する要望、それに対する具体的な説明や、少しずつではありますが改善の成果や変更の予定などのきざしが見られた事から、10月4日より、私達一同は10月1日から実施していた給食を拒否する事を一旦中止するとともに、今後とも引き続きより良い食事の改善、自弁物品の種類の増加などへのご要望を致します。

  つきましては、今月末までに自弁物品の増加をしていただく約束を、私達一同は、直接に担当職員(B602)からもすぐ変えられる物(飲むヨーグルト、大きい袋の砂糖、調味料の増加、カップラーメンやパン類の増加。)を今後変えて行くことや、更に皆の要望を聞いていただき、また他にも私達をご支援、サポートをしていただいている「仮放免者の会」の大町さんにも「自弁物品の増加について、前向きに考えています。具体的な日時は(大町さんに)教える事は出来ませんが、収容者にはお伝えしたいと思います。」と言っていた事から、私達一同は、ぜひくわしい日時を提示していただくようよろしくお願い致します。

  9月30日に私達は責任者の方から、ぜひ増やしたい物品の要望を記入するように言われていた事から、本来ならば茨城の牛久の入管と比較できるような自弁物品の改善をしなければ納得出来ないという意見や考えの人が多かったのですが、入国管理局の方の前向きな姿勢を見受けて、とりあえず最低限ですぐ用意が可能な自弁物品を別紙にて記入致しましたのでよろしくお願い致します。今月(10月末)までにその成果が見られるよう、注意深く見守っています。

  そして最後になりますが、私達の要望や願いに耳を傾けて頂いて、真剣に私達と向きあって頂いた事を深く感謝致します。色々と困らせたこともあったと思いますが、お互いにいい機会、きっかけになったのではないかと思います。今後とも、何かとご意見や要望がございましたら、提案箱や直接的に局長殿に手紙を送ることがあると思います。その都度、どうかよろしくお願いを申し上げます。

    平成25年10月8日
              東京入国管理局収容者一同

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(別紙)要望食品(Iブロック)

1、乳製品
  • ヨーグルトや飲むヨーグルト
  • チーズ(なければ、「さけるチーズ」や「粉チーズ」)
  • 牛乳(なければ粉末のもの)


2、調味料
  • ハチミツ
  • ラー油
  • タバスコ
  • にんにく(チューブのものですりおろし。)
    ※腐らない物は全て大きいサイズにして頂きたい事を一同は強く望んでいます。


3、レトルト食品
  • シーチキン
  • やきとり
  • さんまの蒲焼き
  • 鮭、鯖、鮪フレーク等
    ※パックのもの。温める物が困難ならば、温めなくても良い物。


4、嗜好品(生菓子)
  • あんこ
  • 大福
  • ロールケーキ

  以上で、これらのリクエストが一番多くの人が望んでいる最低限の自弁物品となりますので、可能な物から一日でも早く増加をお願い致します。







Wednesday, October 16, 2013

「医者は食事中なので呼べない」東京入管の被収容者が死亡

  10月14日(月曜)の早朝、東京入国管理局(東京都港区)に収容されていたAさん(57歳)が、入院先の病院でくも膜下出血のため亡くなりました。Aさんはミャンマー出身のロヒンギャ民族で、難民申請者でした。


1.Aさんが亡くなるまでの事実関係
  Aさんが東京入管で倒れてから東京都内の病院にはこびこまれるまでの過程で、およそ40分ものあいだ東京入管は医療的な処置をとらずにAさんを放置するなど、その対応がひじょうに問題あるものであったことが、仮放免者の会の調査から、わかりました。

  Aさんが東京入管に収容されたのは10月9日の午前でした。同日の午後12時15~20分のあいだに、Aさんが居室で手を痙攣(けいれん)させ口からアワをふいて倒れているのを同室のひとが見つけ、ただちにコール・ボタンを押して職員をよびました。

  すぐに職員たちはかけつけました。ところが、結果的に職員がAさんを居室から担架ではこびだしたのが、最初の職員がかけつけてから約40分後の13時直前。そして、ようやく東京入管が救急車の出動要請をしたのが13時15分でした。これらは、目撃していた多数の被収容者の一致した証言や、搬送先の病院の記録などによって裏づけられている、否定しようのない事実と言えます。

  では、Aさんの上記のような状態を認識したのちの東京入管の対応はどのようなものであったか。これについても、被収容者たちの目撃証言は一致しています。

  かけつけた職員たちは、Aさんの背中をさすり、体を横にするなどしましたが、いっこうに医者を呼ぼうとせず、体温や血圧をはかったりするばかり。同室の被収容者たちは、はやく医者を呼ぶように再三にわたり職員に要求しました。ところが、このとき職員は、なんと「癲癇(てんかん)[の発作]だろう。大丈夫」「医者は食事中」などと言って医者を呼びませんでした。

  Aさんは、入管の出動要請を受けて救急車が到着した時点ですでに意識不明の状態で、病院に搬送された後、昏睡状態がつづいていましたが、14日の早朝、かえらぬ人となりました。


2.東京入管への申し入れ
  こうしたの対応の問題点などについて、15日(火曜)、Aさんの親族のかたといっしょに、東京入管に対し、口頭での緊急の申し入れをおこないました。

  申し入れでは、まず第1に、Aさんの親族に対し、ことのいきさつをくわしく説明することをもとめました。親族のかたは、Aさんが入管に収容されて容態が悪化する経緯や、そのときの入管の対応などを、現場にいた職員から説明を受けることをつよく望んでおられます。Aさんが亡くなってしまった以上、その生前の最期の姿、見ることのかなわなかったAさんの亡くなる前の状況を聞きたいというのは、遺族にとって切実かつ当然の欲求であるはずです。この親族のかたの思いに誠実に応えようとすることは、Aさんを収容した入管の最低限はたすべき責任であるといえます。

  第2に、Aさんを病院に搬送するまでの入管側の対応について、入管が収容者責任をはたしているとは言えないことを指摘しました。

  まず、Aさんがアワをふいている、また痙攣もおきているというあきらかに切迫した状態で、ただちに救急車をよばなかったこと。このような状態の人を見た場合、まっさきに救急車を呼ぶのはごくごく常識的な判断であるはずで、そのような常識的判断がなされなかったということを、東京入管は重大な問題として受けとめるべきです。こうした対応の遅れ、また「医者は食事中」などという職員の発言が出てきたことには、被収容者・外国人の人命を軽視する入管組織の差別的な体質が背景になかったのか? あるいは、緊急医療の体制に根本的な欠陥があったのではないか? こういった点は、早急に点検・検証されなければなりません。

  また、Aさんを病院に搬送するまでの対応については、収容場で入国警備官が医療的な判断をしているということの問題についても指摘しました。「癲癇(てんかん)だろう。大丈夫」というような判断は、医療従事者ではない入国警備官がおこなってよい範囲を大きくこえています。「癲癇」うんぬんの職員の発言をぬきにしても、容態の異常がみられたら即座に医師の判断をあおぐこと、医師の不在等の事情でそれができない場合はただちに救急車を呼ぶことは、被収容者の身柄を拘束している入管の当然の責任です。入国警備官が被収容者の病状を過少に評価して医療的な処置が遅れるようなことは、あってはなりません。

  申し入れの3点目としては、Aさんが日本の消極的な難民政策の犠牲者であるということ。Aさんは、ミャンマーで迫害を受けるロヒンギャ民族でした。妻子もミャンマーと国境を接するバングラデシュに避難しています。このため、Aさんの亡骸(なきがら)をミャンマーに送ることもできなければ、妻子のいるバングラデシュに送ることもできません。亡骸となってすら、かれには帰るところがないのです。このような人に在留資格を認めない日本の難民政策とは何なのか。

  4点目として、再収容は絶対にすべきではないということをあらためて申し入れました。Aさんの死亡との直接的な因果関係があるかどうかは別にしても、Aさんのように一度収容されて仮放免になった人は、すでに心身に大きなダメージを受けていることがほとんどです。しかも、仮放免の状態では、健康保険に加入できず、また就労も許可されないため、心身の不調があっても思うように診療を受けられません。そのような人を再度収容することは、人道上ゆるされることでありません。Aさんは、上記のような帰るところのない難民でもあって、かれをふたたび収容することに、心身を痛めつける以外にどのような意味があったのでしょうか。Aさんに早期に在留資格がみとめられていれば、ということを、Aさんがもはやかえらぬ人となってしまったいま、考えずにはいられません。

Wednesday, October 2, 2013

これがニッポンの「お・も・て・な・し」? 東京入管被収容者が給食拒否

  10月1日、東京入国管理局(東京都港区)の被収容者たちが、集団で給食拒否のストライキを開始しました。

  入管が出す給食を拒否しているのは、東京入管のIブロックに収容されている30名近くです。Iブロックの被収容者は、2週間ほど前に東京入管局長あてで食事改善の要求書を提出しており、「9月30日までに何の変化も見られなければ10月1日付けに入国管理局から供給される食事を全て拒否致します」と通告していました。この要求書は、Iブロックの被収容者約30人のうち29名の連名で提出されており、そのうちほとんどが今回の給食拒否ストライキに参加しているとのことです。

  要求書(この記事の最後に全文と画像を掲載しています)は、栄養バランス、食事の量、調理のあり方などについて、入管側が被収容者に対する配慮と真剣さを欠いていることを問題にしています。

  なお、今回の要求書では直接言及されていませんが、東京入管では、給食に髪の毛や虫などの異物の混入があいつぎ、これまでも被収容者たち自身が入管への改善要求や保健所への通報をくりかえしてきた経緯があります。異物混入がたびかさなり、いっこうに改善がみられないといったことは、通常であれば業者が致命的な信用をうしなう重大な事態というべきところです。ところが、異物混入はやまず、入管側もこれに十分な対処をしてきませんでした。

  以上のような経緯もあり、被収容者からは「『外』だったら業者がつぶれるようなことが、『ここ』だから通用しているし、入管もちゃんと対処していない」「入管は私たちをバカにしている」といった声があがっております。

  たしかに、虫や髪の毛の入った食事を出し続ける給食業者が営業をつづけられる場所はほかにないでしょう。入管がそのような業者の実態を認識しながら有効な対処をとっていないのは、被収容者に対する根深い差別と蔑視が入管という組織をおおっているからではないのか。被収容者たちがそう受け取るのも、もっともなことです。

  栄養バランスや量、調理といった給食の内容についても、被収容者からの改善の要求や嘆願が出されたのは今回がはじめてではありません。しかし、くり返される要求・嘆願に東京入管側がまともにとりあってこなかったことが、今回の被収容者たちの行動につながっています。入管側は、「我慢の限界に達してい」るという被収容者の言葉の意味するところをよく考えるべきです。被収容者たちは、すでにいままで我慢をしてきたのです。

  Iブロックの抗議に、他の複数のブロックの被収容者たちも呼応し、D、E、J、Kの4つのブロックでもすでに同様の要求書を提出しており、改善がみられなければIブロックにつづき10月7日から給食拒否をおこなうと入管側に通告しています。要求書に署名した被収容者の人数は、Iブロックの29名のほか、Dブロック30名、Eブロック22名、Jブロック31名、Kブロック21名、合計すると133名にのぼります。署名者の国籍も、私たちが確認できているだけで、25国籍におよびます(スリランカ、タイ、ガーナ、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、グアテマラ、フィリピン、ボリビア、ブラジル、中国、イラン、アメリカ、マリ、インド、韓国、モロッコ、ネパール、フランス、アルジェリア、セネガル、ウガンダ)。

  こうした被収容者たちの動きに対し、東京入管側も9月30日時点で、要求書の提出された各ブロックに今後の給食の改善方針について職員が出向いて説明しているようではあります。また、その改善方針について、全ブロックに文書を掲示しているようです。これに対し、被収容者側は、「食事がどう改善されるのか、実際に見てみてから、対応を考える」として、現在も(10月2日時点)給食拒否をつづけています。

  仮放免者の会としては、以下に掲載する被収容者の要求書の要求内容を全面的に支持します。要求書が述べるとおり、入管側には被収容者の「健康管理や食事の栄養バランスなどに付いての適切な管理をしなければならない」収容責任があります。東京入管が、被収容者たちの今回の要求を真剣に検討し、被収容者が納得するような改善方針を具体的に提示すること、また提示した改善方針を誠実に実行することを求めます。


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入国管理局局長殿

  東京入国管理局に収容されてる方々を代表してこの手紙を差し上げます。

  日々、閉ざされた空間で生活し、多種多様な人が集まって共同生活を送るのが、とても大変で苦に思う事がとても多いのであります。精神的、肉体的な負担は大きく、日々不安な身心状態です。しかし、致し方ない思いから、皆が我慢をし、現状を耐えてきました。

  でも、長期期間に渡り収容されていることで身体の衰えや体力の低下に皆が悩み、苦しみ、出所後の暮らしや生活を考えて健康的な身体は欠けてはならないものであり、日々の食事に現在当局から私達へ供給されている食事は、正直栄養バランスが悪く、揚げ物や脂物に偏っていて多国の方が集まるこの中にはあってない調理法や味付けです。

  酢物や味噌で味付けをしている物、薄味の煮物に副菜食(おかず)は多くの人の口に合わず、食べないで残してしまう人がほとんどです。ただでさえ、栄養の低い食事なのに、出された物を食べれなくて、残してしまえば更に栄養摂取が悪く、健康状態も悪化してしまいます。現状況は悪循環を生み、私達収容を余儀無くされている側として我慢の限界に達しています。もう少し私達の健康状態を真剣に考えて、私達の要望や願いにもっと耳を傾けて欲しいものです。

  まず一つは、食事(昼、夕食)の中身を気にして栄養バランスや、外国の方のことを配慮して、調理をして頂きたいです。冷凍食品だけを弁当箱に詰めたり、いい加減な分配で盛り付けをしたり、如何に適当に行っているかを強く改善を求めます。茨城県の牛久にある入国管理局の施設と比べれば、ここ品川の入国管理局の悪さの差が一目瞭然です。全く、同じようにして欲しいとは言いませんが、せめても味付けや成人男性が必要な栄養に見合った食事を出して頂きたいと思います。

  そして二つ目は、自弁で購入出来る食料品についても品数を増やして、レトルト食品や乳製品(チーズ、牛乳、ヨーグルト)、カップ麺類にパン数も是非とも増やして頂きたいです。調味料品(酢、コショー、ソース、ハチミツ、ラー油等)の増加もお願い致します。参考までに茨城県牛久市にある入国管理局の購入用紙のコピーを同封致しますので、ご参照下さい。

  最後三つ目ですが、代替食(アレルギー、宗教などの豚肉、油抜き等)も現状では代替食として成り立っていなくて、普通の食事がフライ物が出れば、油抜きの代替食は缶詰のフルーツの詰め合わせや茹でた一切れのれんこんやミニトマトサイズのナスが出されています。どう考えても代替食として成り立っていません。また、豚肉が食べれない人が多いことから一切豚肉料理が出ません。宗教に関係ない人をまで一緒にするのがおかしいと多くの人が不満に思っています。

  調理を真面目にせず、適当な献立で皆不満を募らして我慢の限界に達しています。

  以上、これまで書いて来た事を入国管理局の責任者である局長殿がどう思い、受け止め、判断をされるかを注意深く見守っています。法律に照らせても、入国管理局に収容され、余儀無く拘禁生活をされている以上は、私達収容者の健康管理や食事の栄養バランスなどに付いての適切な管理をしなければならない義務が付けられているにも関わらず、現時点ではその責務を果たしていません。その責務をちゃんと果たさなければいけない立場であることを自覚し、全ての要望をすぐには可能に出来なくても、せめても自弁物品(食料品)の改善、増加はすぐに出来ると思います。

  二週間の時間を置いて、9月30日までに何の変化も見られなければ10月1日付けに入国管理局から供給される食事を全て拒否致します。

  どうか私達の悩みや耐えがたい現状に目を向けて、真剣にお考えをして頂きたく、よろしくお願い致します。身体的な事、健康に関することなので、単なる我慢として受け止めないので、正しきご判断をお願い致します。

  以下、収容されている者の署名を記載致します。

[連名での氏名、国籍、生年月日、署名の欄(省略)]









Thursday, September 26, 2013

仮放免者の会 第4回大会(10月27日)のおしらせ

  10月27日(日曜)、仮放免者の会(PRAJ)の大会を東京の板橋でおこないます。
  年1回ひらかれる大会も、ことしで4回目になります。
  7月6日に法務省がおこなったフィリピン人一斉送還や、最近の仮放免者問題をめぐる情報を共有し、また5月31日に「仮放免者に在留資格を!」弁護団との共同でおこなった「第1回仮放免者一斉再審申立」など、仮放免者の会のこの1年間のとりくみをふりかえります。そして、今後1年の運動方針を話し合います。
  仮放免者当事者のみなさまはもちろん、仮放免者問題、あるいは広く入管をめぐる非正規滞在外国人に対する人権侵害問題に関心をいだくみなさまの参加をお待ちしています。


  フィリピン人一斉送還、仮放免者問題については、それぞれ当ブログの以下の記事を参照してください。


  以下、大会のチラシの画像です(クリックするとおおきくなります)。







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【English】

Provisional Release Association in Japan
4th Annual Conference

October 27, 2013
13:00-16:30
@HIGH LIFE PLAZA ITABASHI
If you don't know the place,
come to the west exit of JR Itabashi station at 12noon.



  While many of our friends were re-detained one after another, the Provisional Release Association in Japan was established three years ago.
  Though large scale re-detention has stopped since then, we still see some re-detained people every now and then.
  In July, seventy-five Filipinos were forced to go back to the Philippines by the Japanese Government.
  We should never allow such a forced deportation of people who has reasons not to leave Japan.
  We will be taking action to stop re-detention and forced deportation.
  Then, we will be taking action to get status of residence!
  We are now in the vital moment of our movement.


More Information:
Miyasako : 090-6547-7628
Omachi : 090-3549-5890
Nagai : 090-2910-6490
Elizabeth(English available) : 080-4163-1978



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【日本語(漢字かなまじり)】

仮放免者の会  第4回大会

10月27日
13:00-16:30
@ ハイライフプラザいたばし
集合: JR板橋駅  西口  12時


  3年前、仮放免者の仲間たちが次々と再収容されていく中で、仮放免者の会は結成されました。
  その後、大量の再収容はストップしましたが、今も時々、仲間が再収容されています。
  7月には75人のフィリピン人が強制送還されました。私たちは、帰国できない仲間を無理やり送還することは許しません。
  私たちは再収容反対、強制送還反対の運動を続けていきます。
  そして、在留資格取得へ!
  いま私たちの運動は重要な時期をむかえています。


お問い合わせ先:
Miyasako : 090-6547-7628
Omachi : 090-3549-5890
Nagai : 090-2910-6490
Elizabeth(English available) : 080-4163-1978


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【にほんご(ひらがな・カタカナ)】

かりほうめんしゃ  の  かい(PRAJ)
だい4かい  たいかい

10がつ27にち
13:00-16:30
@ ハイライフプラザいたばし
しゅうごう: JRいたばしえき  にしぐち  12じ


  3ねんまえ、かりほうめんしゃ  の  なかまたち  が  つぎつぎと  さいしゅうよう  されて  いく  なかで、かりほうめんしゃ  の  かい  は  けっせい  され  ました。
  そのご、たいりょう  の  さいしゅうよう  は  ストップ  しました  が、いまも  ときどき、なかま  が  さいしゅうよう  されて  います。
  7がつ  には  75にん  の  フィリピンじん  が  きょうせいそうかん  され  ました。わたしたち  は、きこく  できない  なかま  を  むりやり  そうかん  する  ことは  ゆるしません。
  わたしたちは  さいしゅうようはんたい、きょうせいそうかんはんたい  の  うんどう  つづけて  いきます。
  そして、ざいりゅうしかく  しゅとく  へ!
  いま  わたしたち  の  うんどう  は  じゅうような  じき  を  むかえて  います。


おといあわせさき:
Miyasako : 090-6547-7628
Omachi : 090-3549-5890
Nagai : 090-2910-6490
Elizabeth(English available) : 080-4163-1978

Thursday, August 22, 2013

【転載】東日本入管センターで結核排菌者――BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)による申入書



  東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の被収容者から、結核の排菌者がでました。センターの医療・衛生状況の劣悪さをよくあらわす出来事です。
  この件について、BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)が同センターに対して申し入れをおこなっています。申入書の全文を以下に転載します。


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申  入  書
2013年8月1日
東日本入国管理センター所長  殿

BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)



  7AブロックのCさんが結核患者として隔離入院されました。私たちはCさんとは面会しておらず、同ブロックの同国人から彼の状況を聞く範囲ですが、今回の事態から、改めて診療体制の充実と長期収容をしないよう申入れます。

一、診療体制の充実
  昨年8月10日には仮放免者の会から、「収容が長期化する中で持病は悪化し、健康だった者も拘禁反応に苦しめられます。また1日40分の戸外運動は被収容者がストレスを発散する第一の場であり、そこでの堅い壁と地面、運動シューズの未整備のためケガが絶えません。昨年度までの勤務医は最悪でしたが、彼女は辞めたものの今年度に入っての医師の勤務体制は整備されず、願箋を出してから2週間・3週間、ひどい場合は1ヶ月以上待たされます。現在の状況では、貴職が収容主体責任を果たしているとは思えません。貴センターが勤務医の求人に努力されていることは承知していますが、被収容者の生命・健康は、貴職らが努力しているからとすまされる問題でもありません。結核菌の排菌者が出れば該当者・同房ないし同ブロックの者や貴センター職員、牛久市民・茨城県民に対しても多大な犠牲を強いることになります。医師の増員あるいは被収容者数の減少をもって現状を早急に打開し、病人・けが人が速やかに診察・治療を受けられるよう申入れます。」との申入れをしていました(*注1)

  今回のCさんのケースにおいて、同ブロックの被収容者から聞くところでは、以前からCさんは「咳がすごく」「運動を初めて5分くらいすると胸が苦しくなっていた」と聞きました。2010年の結核患者が出て以降、入所時、その後定期的に結核検診をするようにしたと聞いていましたが、排菌状態に入ってしばらく放置されたのではないかと思います。なぜ今回のような事態に至ったのか説明を求めます。またCさんの入院後に仮放免になった人たちがいますが、地方局とも連携して、彼らへの確実な検診が行われるよう申入れます。


二、収容長期化を回避すること
  感染比率の高い発展途上国出身者を現在の劣悪な収容生活に長期にわたって置くことが、発症に至る危険性を高めていると考えざるを得ません。

  センターでの収容実態は監禁的収容であり、精神を破壊し健康を著しく害するものです。事実、ほとんどの被収容者には目まい、頭痛、吐き気、不眠、食欲不振などの拘禁反応が現れてきます。2010年7月30日、法務省入国管理局は「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより、収容長期化をできるだけ回避するよう取り組む」と報道発表をしました(*注2)。これを履行していただきたい。これまでも「①退令収容期間が半年を越える者②収容に耐えることの出来ない重病者③難民申請者(難民該当性の立証を妨げる)④再収容者(再収容者は通算で長期収容にならざるを得ない)」への即刻の仮放免許可を申入れましたが重ねて申入れます。

 Cさんは、年齢は50台、来日して20年以上と聞きました。いつ感染したのかはわかりませんが、本国で感染していた可能性が高いと思います。若い時には抵抗力・免疫力が高く結核菌が抑え込まれていたものが、年齢と、一年に渡る収容生活によって抵抗力が落ち、発症したものと思われます。今回の事態からも、2010年7月30日の報道発表を履行するよう申入れます。

以  上
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*注1  昨年8月の仮放免者の会による申入書は、以下の記事参照。


*注2
  2010年7月の法務省による報道発表は、以下。

Thursday, July 25, 2013

【転載】「日本社会が負うべきつけの精算」(『日経新聞』より)

  1ヶ月あまり前の記事ですが、『日本経済新聞』(以下、『日経』)が、非常に的確で公平な記事を掲載しているので、これを転載します。

  『日経』は、5月31日に仮放免者の会と「仮放免者に在留資格を!」弁護団が共同でおこなった「第1回仮放免者一斉再審申立」も取材しており、このときの記者会見でのやりとりも記事に反映されております。

  記事は、人道的な観点だけでなく、権利侵害という観点から仮放免者問題に焦点をあてており、また、「不法就労者と知りつつ利用しようとしてきた日本社会」の側の責任も問う内容となっております。

  いっぽう、法務省はもっぱら非正規滞在外国人の側の「不法」を問い、「不法」なのだから退去強制を命じるのは法にもとづいた措置であり、あるいは反対に人道上の理由から在留特別許可を与えて滞在を合法化するとしても、それは法務大臣の裁量の問題であるというような主張をつねにしてきました。

  しかし、まさしく『日経』の記事が問うているように、「不法就労者と知りつつ利用しようとしてきた」のはだれなのか。また、日本社会や日本の産業界が「不法就労者」を利用するためにも、それは法務省・入管当局の関与(「不法」に対する摘発をゆるめたり「厳格化」したりといったこともふくめ)なしには不可能なのであって、入管行政もまたこの仮放免者問題において責任を問われるべき立場にあるのではないか。

  そういったことを、私たちも、このブログもふくめてこれまで問題にしてきたところです。

  7月6日には、法務省は専用チャーター機をつかってフィリピン人75人を強制送還しました。


  送還された人の多くは、長期にわたり日本で生活してきた人たちであり、まさしく日本社会が「不法就労者と知りつつ利用し」てきた人たちであるわけです。そうした「日本社会が負うべきつけの精算」をあべこべにも非正規滞在外国人の側に一方的に負わせたのが、今回の一斉送還であると言うことができ、その不当性はあきらかです。

  以下、転載します。


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新時代の入国管理⑦
人道配慮、見えぬ線引き

  不法入国や不法残留で退去強制(強制送還)処分が確定したものの、母国の事情や日本人家族との関係などから帰国できず、なお在留資格を求め日本社会で暮らす外国人がいる。収容先の入国管理施設からの仮放免中で、就労はできず健康保険適用もない。

  その数は昨年末で約2600人。うち21人が5月末、法務大臣に対し審査のやり直りを求め一斉に申し立てをした。

  テレビドラマ「おしん」に共感し来日して23年、仕事中の事故で障害を負ったイラン人男性もいる。支援する指宿昭一弁護士らは「真面目に暮らしており、放置しているのは人道上許されない。あきらめて帰国させようとしているのではないか。当事者の実情を理解していない」と指摘する。

  入国審査官の退去強制手続きの過程で判明した事情によっては、法務大臣から人道上の配慮による在留資格が与えられる場合がある。在留特別許可だ。2004年に治安対策から推定25万人の不法滞在者を5年で半減させる計画が打ち出されたが、その間の特別許可は計5万人弱に及ぶ。計画は「合法化」への切り替えで達成している面もある。

  日本人の国際結婚はここ数年は低下傾向だが、なお結婚全体の4%前後。特別許可も日本人や永住者との結婚関係の場合が多くを占める。不法残留の外国人夫婦でも子供が成長していると教育の観点から認める例もある。

  法務省は在留特別許可を分かりやすくし、出頭を促すためにも「ガイドライン」や事例を公表してきた。ただ「基準ではない。あくまで国の裁量」(入国管理局審判課)という立場で司法もこれを容認している。

  一般に駆け込み結婚は認められにくく、不出頭は不利になる。外国人専門の川本祐一弁護士は「長年同居してきた事実婚夫婦が自主的に出頭しても不許可が多い中で、同居の実績がないのに、摘発された不法滞在外国人と永住者のカップルが許可されることもある。判断が外から理解できない」と指摘する。

  「言い分が本当に理解してもらえたのか」。当事者や支援者らにも検証ができにくい。10年には出国を拒んだガーナ人男性が強制送還の護送中に死亡。護送送還が中断し、長期収容者と仮放免者が増加した事情がある。今年に入り護送による強制送還は再開されている。しかし不法就労者と知りつつ利用しようとしてきた日本社会が負うべきつけの精算は済んでいない。

『日本経済新聞』(夕刊) 2013年6月17日(月曜日)




Saturday, July 6, 2013

入管による一斉無理やり送還に抗議します

  きょう7月6日、入管は、フィリピン人にたいする一斉無理やり送還をおこないました。

  東日本入国管理センター(茨城県牛久市)からフィリピンのマニラ空港に送還されたのは、現在、私たちがつかんでいるだけで30名程度、東京入国管理局からも相当の人数が無理やりに送還されたもようです。また、名古屋入国管理局からもフィリピン人被収容者1名が「消えた」という情報がよせられていますが、入管による強制送還は、まさに密室でおこなわれる人権侵害にほかなりません。

  今回、フィリピンに送還された被害者たちへの追跡調査は、これからおこなっていくところですが、現時点でわかっているだけでも、今回の被送還者には、日本で結婚している、あるいは日本に子どもがいるなど、送還によって家族や子どもとひきさかれてしまう人もふくまれています。

  東日本入国管理センターの被収容者は、それぞれ帰るに帰れない切実な事情をかかえて帰国をこばんでいる人がほとんどです。国籍国での迫害が予想される難民申請者であったり、家族が日本にいたり、また日本での滞在が長期にわたるためすでに故郷には生活基盤がなかったり、それぞれの事情はさまざまであり、かつ切実なものです。

  こうした帰るに帰れない人々に対し、入管は、マニラ空港と北京空港にそれぞれ100人を送還するという方針をかかげ、今回、フィリピン人の一斉無理やり送還におよんだわけです。それぞれの個別の事情などおかまいなしで、まず数値目標ありきで、数合わせのごとく飛行機につめこんで送りつける。こうした入管のやり口には、はげしい怒りをおぼえます。

  今週、東京入国管理局が、それぞれ1歳ぐらいと3歳ぐらいの乳幼児をふくむすくなくとも2組のフィリピン人母子を収容した事実を私たちは確認しています。彼女たちも、今回の一斉送還で帰国させられた可能性が高いですが、こうした乳幼児を母親もろとも無理やり飛行機にのせて「帰国」させるという危険な行為も、数値目標を達成するための「数合わせ」としておこなわれているのでしょうか。

  入管は、ひとの生活、ひとの安全、ひとの人生をなんだとおもっているのでしょうか。日本社会が、非正規滞在のひともふくめて外国人の働き手を利用してきたこと、そのことに法務省の入管行政もいわば加担し共犯関係をむすんできたこと、そして、日本政府はご都合主義的な方針転換のもと、これらの非正規滞在者への摘発を急遽強化して、追いだしにかかったことについては、以下の記事でくわしく述べております。


  「労働力」として必要とみなしているうちは、「不法」状態に置いて利用するだけ利用し、不要とみなせば、まるでゴミでも捨てるかのように飛行機につめこんで追放しにかかる。このような、ひとをモノか家畜のようにあつかうような入管行政を、おわらせなければなりません。そのために、今回の一斉送還についての調査をすすめ、入管の責任を追及していきます。

  また、今回の件につき、以下への抗議・意見提起をよびかけます。


【抗議先】
(1)東日本入国管理センター  総務課
   tel: 029-875-1291
    fax: 029-830-9010
    〒300-1288 茨城県牛久市久野町1766-1

(2)東京入国管理局
tel: 03-5796-7250(総務課)
Fax: 03-5796-7125
〒108-8255  東京都港区港南5-5-30


  また、あわせて、今回の送還において輸送業務をうけおった日本航空株式会社(JAL)への抗議も呼びかけます。


(3)日本航空株式会社(JAL)


  同意なきチャーター便強制送還への非協力を私たちが要請したさいの、JAL広報部の対応については、以下記事をご参照ください。